26 梨木香歩

『この庭に 黒いミンクの話』 梨木果歩

この庭に  黒いミンクの話
梨木 香歩 須藤 由希子
理論社 (2006/12)

 雪が積もると、どうしてあんなに景色が変わってしまうのだろう?木の緑も、土の茶色も、道路の灰色も、すべてが真っ白になってしまうと、あっという間に知らない世界になってしまう。雨だと外に出たくないなぁと思うような寒い日でも、雪だと思わず足を踏み出したくなってしまう。

 雪を踏みしめる音だけが響き、後は何の音もしない。木の枝から雪が落ちる音にビックリしたり、鳥が羽ばたく音に振り向いてみたり、自分を取り囲む自然の大きさを心地よく感じるひと時。

 自然を愛する梨木さんらしい、静かな物語です。不思議な女の子と黒いミンク、そしてオイル・サーディンばかり食べて暮らしている主人公が出会い、不思議なふれあいが始まります。

 物語の中にタイミングよく登場するイラストが、益々静かな雰囲気を盛り上げてくれています。「雪の降る町を、思い出だけが通り過ぎてゆく♪」なんて歌を思い出してしまいました。

 最後のシーンは、 「ミケルの庭」と繋がっていたんですね。

674冊目

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『水辺にて』 梨木香歩

水辺にて on the water/off the water

 梨木さんの作品では、いつも植物や動物など、自然との触れ合いが描かれることが多いのですが、この本で紹介されている梨木さんの日常は、実に自然に近いところにあるのです。

 山歩きをしたり、植物の観察をするだけでなく、カヤックを操るのも趣味だとは恐れ入りました。筋金入りのナチュラリストなんですね。

 水面に浮かぶカヤック上からダムの底に沈む村に思いを寄せ、鳥の鳴き声に季節を感じ、急に変わる天候に翻弄され、「ああ、こういう体験が作品の土台となっているんだなぁ」というような場面の連続です。

 サンカノゴイというのは大型のサギの一種で ~中略~ この鳥は危機的な状況になると、杭のふりをする。普段は短くコンパクトにしている首を、嘴、首、胴体まで下顎(というようなものがあるとして、その部分)から一直線に伸ばすのだ。(本文より)

 本の中でしか知ることが無かった鳥と出会って、その姿に見とれてしまったり。外見からは魚のように見えている鯨の骨格標本を見て、そこに骨盤が残っていたり、胸びれのように見えている部分の骨が実は腕と同じようなものであることに驚いたり、知るということの喜びにも満ちているのです。

 子供の頃に、外国の物語ばかり読んでいたせいか、普通の日本人とは違う感性になってしまったのかもしれないと、梨木さんは自己分析されているのですが、それだけが原因ではなさそうですね。梨木さんの伸びやかな好奇心こそが、彼女の個性の原点なのだと思えてくるのです。

P.S. 筑摩書房の「水辺にて」インタビュー記事は → こちら

657冊目

| | コメント (6) | トラックバック (2)

『沼地のある森を抜けて』 梨木香歩

沼地のある森を抜けて
梨木 香歩
新潮社 (2005/08/30)

続きを読む "『沼地のある森を抜けて』 梨木香歩"

| | コメント (6) | トラックバック (4)

『西の魔女が死んだ』 梨木香歩

続きを読む "『西の魔女が死んだ』 梨木香歩"

| | コメント (15) | トラックバック (12)

『りかさん』 梨木香歩

りかさん (新潮文庫)
りかさん (新潮文庫)
posted with amazlet at 05.05.04
梨木 香歩
新潮社

 ようこちゃん、りかは縁あって、ようこちゃんにもらわれることになりました。りかは、元の持ち主の私がいうのもなんですが、とてもいいお人形です。それはりかの今までの持ち主たちが、りかを大事に慈しんできたからです。ようこちゃんにも、りかを幸せにしてあげる責任があります。(本文より抜粋)

続きを読む "『りかさん』 梨木香歩"

| | コメント (10) | トラックバック (3)

『村田エフェンディ滞土録』 梨木香歩

村田エフェンディ滞土録
梨木 香歩
角川書店 (2004/04/27)

 主人公の村田さんは土耳古(トルコ)へ考古学の研究で留学している。英国婦人の屋敷に下宿しており、この屋敷には独逸人の考古学の学者や、ギリシャ人の研究者も住んでいる。そして、ラテン語を話す鸚鵡も。

 エフェンディというのはおもに学問を修めた人物に対する一種の敬称だが、彼からそう呼ばれると、ちょうど日本で商売人が誰彼と泣く先生と呼ぶのと同じ印象を受ける。(本文より抜粋)

 今でも遠いトルコという国に、飛行機がない時代に旅した人の驚きはどんなものだったのだろう?とはいっても、色々な媒体で情報を得ているアメリカやヨーロッパと違って、現代であってもトルコという国にはビックリするものが多いのだろうなぁ!

 昔、トルコ人の知人にもらった「ターキッシュ・デライト」のことを思い出してしまった。あの「ナルニア国ものがたり」にも出てくるお菓子、そのお菓子が食べたくて子供たちが魔女についていってしまう。こんな有名なものですら日本ではお目にかかれない。

 テレンティウスという古代ローマの劇作家の作品に出てくることばなのだ。セネカがこれを引用してこう言っている。「我々は、自然の命ずる声に従って、助けの必要な者に手を差し出そうではないか。この一句を常に心に刻み、声に出そうではないか。『私は人間である。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない』と」。(本文より抜粋)

 このことばは、わたしの座右の銘にしようと思います。すべての人間はどこかでつながっているものですもの。

 この本は、とても不思議なお話なのだけど、時空を越えてトルコの街を感じることができました。そしていつの日か、トルコへ行ってみたいという気持ちが沸いてきたのです。

 最後にもう一言、村田さんは 家守奇譚 の綿貫さんのお友達だったなんて。そうか、そうだったんですね。

| | コメント (14) | トラックバック (13)

『家守綺譚』 梨木香歩

家守綺譚
家守綺譚
posted with amazlet on 05.01.12
梨木 香歩
新潮社

 学生時代の友人「高堂」の父から、家のお守りをして欲しいと頼まれて住むようになった一軒家は、古いけれどもなかなか趣のある家のようです。庭には様々な植物が茂り、鳥など様々なものがやってきます。

 庭のサルスベリの木に惚れられてしまったり、川で出会ったカワウソに同族だと思われてしまったり、主人公は今まで知らなかった世界へどんどん引きずり込まれていくのです。

 この本から漂うのは、昔の日本の家ってこういう感じだったんだろうな?という感じと、家のすぐそばには自然があって、その自然と仲良くいきていくのって楽しいなという感じなのです。日本には四季があって、そのうつろいに合わせて生きていく楽しさを、もっともっと残しておかなければと思ってしまうのです。

 普通の世界のすぐ隣に別の世界があるって、想像しただけでも楽しくなってしまいます。ほら、そこの木の枝にとまっているスズメだって、花の蜜をねらっているメジロだって、そこにいるのは、あなたのことを観察するためかもしれない?なんてね。

 P.S. ほのぼの文庫さんの 植物アルバム がとってもステキなんです。この本に登場する植物すべてを見ることができますよ。

| | コメント (28) | トラックバック (14)