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『楊貴妃になりたかった男たち <衣服の妖怪>の文化誌』 武田雅哉

 中国の芝居「京劇」では、女性の役を演ずる女形「男旦」という人たちがいます。歌舞伎の女形も美しいけれど、男旦もまた美しいのです。女性自身が演じる「女」よりも、男の目から見た「女」を演じたほうが、より美しくなるというのは実に不思議なものです。

 今でこそ男女の服装の差は少なくなったけれど、昔は明らかに違う服装をしていたし、何よりも違っていたのは「纏足」とピアスだったのだそうです。ピアスの穴は大人になってからでもあけられるけど、纏足は子供のころにしかできません。

 悪名高き「纏足」ですが、女性の役を演じるには纏足であるように見せなければなりません。京劇で男性の俳優が女性を演じる場合には、「蹺」と呼ばれる木製の義足を足にくくりつけて演技をしたのだそうです。足のサイズわずか10cmの蹺は、まるでバレエのトウシューズのようで、これで踊ったりするのには、物凄い技術が必要なのだそうです。

 文化大革命の時期に、この蹺は禁止されたのですが、80年代以降に復活しています。

 昔の中国には、男性なのに女性のフリをして悪事を働く人がかなりいたのだそうです。顔は化粧をすればいいし、服を着てしまえば体型はある程度ごまかす事ができます。でも足が大きいままではすぐにバレてしまうので、そういう人たちも蹺を身に着けていたのだそうです。悪事を働くのも大変だったんですねぇ!

 クローネンバーグの映画、「M.バタフライ」では、女形の役者を女だと誤解して恋してしまう男が主人公でしたが、これも実話だったというのだから、女装した男が巻き起こす事件というのは、さぞかしたくさんあったのでしょうね。

M. Butterfly

675冊目

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