『ウィーン わが夢の町』 アンネット・カズエ・ストゥルナート
- アンネット・カズエ・ストゥルナート
- 新潮社
- 1470円
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書評/ルポルタージュ
この本を書かれたカズエさんの人生は、「真実は小説より奇なり」そのものでした。
上海で生まれ、戦争の混乱の中、家族と伴に日本に引き上げて来た時、彼女は日本語が殆ど分かりませんでした。しかも、背が高く派手な顔立ちの彼女は「あいのこ」扱いされて、言われ無き差別を受けたのです。
どうやら日本の生活に慣れた頃、母親が亡くなり、一家離散となるのです。親戚の家に預けられたり、養女になったり、病院に住み込みで勤めたり、そんな苦しい生活の中でも、彼女は定時制高校を卒業し、通信教育で音楽の勉強をしたのです。
「歌手になりたい」という彼女の夢は、最初は本当に「はかない夢」でした。音楽学校へ行くお金もないし、それどころか自分が生きていくだけでもギリギリの生活の中で、ご飯を食べるお金を削って貸しピアノで練習をし、とにかく夢を持ち続けていたのです。
そして、ウィーンへ行く決意をするのですが、その時が31歳。普通だったら、もう夢など諦めている歳です。でも彼女は諦めず、ウラジオストク行きの船に乗ったのです。そしてシベリア鉄道、モスクワからはウィーン号と乗り継ぎ、約2週間かけてウィーンへ辿り付いたのです。そして、ここで彼女の運命は大きく開けて行ったのです。
カズエさんのような境遇でいたら、大抵の人なら「普通の生活が出来るようになりたい」という程度の夢で満足してしまうでしょう。大きな夢を持ち続けたからこそ、カズエさんの夢は叶えられたんです。
「諦めないこと」「努力し続けること」って、本当に大事なことなんですね。
カズエさんはいろんな所で虐められたり、差別されたりするのですが、虐める側の心理って不思議ですね。決して本筋の所では悪口にならないんです。例えば合唱をしているときに、歌が下手だと言われるなら、それはしょうがありません。それは正当な文句です。
でも、全然関係ないことにばかりケチを付けられてしまうんです。親がどうだとか、見た目がハデだとか、あいのこじゃないかとか、東洋人だからとか、どうでもいいことばかり!
歌が上手いとか、ステキな人だとかってことだけでいいじゃないですか。自分たちと同じようでないと、のけ者にしようとしてしまう気持って、いったいどこから出てくるんでしょうか?人は皆同じじゃないからこそステキなはずなのに、どうして1つの枠にはめたがってしまうのでしょう?
「あの人はよそ者だから」「外人だから」と、無意識に壁を作ってしまうことの危うさに気が付かないと! 新しいことに順応できない。環境を変えたくない。という自分勝手な気持が、どんなに人を傷つけてしまうのかということに、わたしたちは気が付かなければいけないと思うのです。
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