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『はじめての文学 浅田次郎』

はじめての文学 浅田次郎
浅田 次郎
文藝春秋

 この「はじめての文学」シリーズは、これから本を読もうと思っている読者のために、著者が自ら選んだ短編集です。どの作品も一度は読んだことがあるものばかりでしたが、やはり浅田さんの文章に引き込まれるように読んでしまいました。

ふくちゃんのジャック・ナイフ(月のしずく)
 父の会社で働いていたふくちゃんは、ブラジルへ移民したいという夢があった。恋人だっていたのに、彼女をおいてまで彼の地へ行きたいというのだ。僕はそんな彼に憧れていた。

かくれんぼ(見知らぬ妻へ)
 戦争の記憶がまだ生々しかった頃、アメリカ人を父に持つジョージという少年が近所に住んでいた。親たちは彼と遊んではいけないという。でも、僕たちは彼と一緒に遊ぶようになった。

夕暮れ隧道(霞町物語)
 高校三年生の夏、僕は受験生だけれど結構夜な夜な遊び回っていた。そんなこととは知らない同級生の真知子と湘南へドライブへ行く約束を取りつけた。

シエ(姫椿)
 鈴子が飼っていた猫のリンが死んでしまった。身寄りのない彼女にとって、リンは唯一の家族だったのに、供養を終えての帰り道、とあるペットショップの店名に目を惹かれた。「リン、だって・・・」

立花新兵衛只今罷越候(沙高樓綺譚)
 それは戦後すぐの映画撮影所のお話。新撰組の映画を撮影中に、立花新兵衛というエキストラの男性がいた。彼の演技は大部屋俳優とは思えないほどの迫力があった。

 この本に集められたのは、ちょっと不思議な世界のお話です。やっぱり浅田さんは文章が上手いなぁと思います。1つ1つのシーンが目に浮かぶような、映画のような文章です。それに、チョット間違えたらかなりクサくなるようなシチュエーションでも、さらりと描いてしまうんですよね。

 もし若い読者が私のわかりやすい小説を読んで、文字だけで作り出された世界の面白さに目覚めたなら、思い切り背伸びをしてさまざまの書物を読み始めてほしい。小説の入江の先には文学の海があり、その向こうには芸術の大洋が拓けている。生涯をかけてもけっして渡りつくすことのできぬ、豊饒の海である。(あとがきより)

 浅田さんって、どんな小説を書く人なのかな?と思う人にはオススメの本だと思います。この本だけでなく、この「はじめての文学」シリーズは、読書初心者向けの良い企画だなぁって思います。まずはとっつきやすい短編で味見をして、美味しかったら長編もどうぞって感じですね。

 TVや映画のように映像があると、何も考えなくともストーリーは展開していきます。それに対して小説の場合は、文字を読んで自分がどう想像するかにかかっているのですよね。だから、同じ主人公の物語を読んでも、100人読めば100通りの解釈になります。同じシーンを読んでも、それをどう受け止めるのか、どうイメージを広げるのかは、読んだ人の勝手です。(#^.^#)

 どんな顔をしてるのかなぁ?どんな声をしてるのかなぁ?どうしてそんなことをするのかなぁ?と自分の中でイメージを膨らませていきます。そして出来上がるのは自分だけの主人公です。

 石原裕次郎に憧れているふくちゃんって、斜に構えたポーズなんかマネしちゃってるのかなぁ?ジョージ君は気が弱そうな、線の細い子なのかなぁ?なんてね!想像がどんどん膨らんで、時にはそれに妄想も混ざったりして、だから読書は楽しいんだよねぇ!だから読書は止められない!

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