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『浮世の画家』 カズオ・イシグロ

浮世の画家
An artist of the floating world

カズオ・イシグロ
Kazuo Ishiguro

 小野は空襲で妻と息子を亡くし、今は一人暮らしをしています。恒例でもあり、仕事を辞めた今、庭いじりが主な日課です。たまに訪れてくる娘2人とは、もう一つ話がか 合わない感じがしています。

 

 かつては高名な画家だったのですが、軍の思想に加担したということで、周りから無言の圧力を受け、自身もそれを悔いているところがあって画家を辞めてしまいました。

 

 歳をとると若い人たちとは何となく話が合わなくなっていきます。まして戦後の日本は価値基準が劇的に変わってしまったのですから、小野さんが世間との乖離を強く感じるのはしょうがないことだったのかもしれません。

 

 気弱になるわけでもなく、淡々と生きている彼ですが、自分の過去が娘の縁談に影を落としているのかもしれないという部分には、かなり気を使っています。

 

 絵を描くことが好きで画家になったのに、絵を描くことができない生活って悲しいことです。その反動なのか?孫に一生懸命に絵を描かせようとするのだけれど、上手くいかないあたりに、悲哀を感じます。

 

 イシグロ氏の小説は、いつも静かな中に物語が進行していきます。大事件が起きるわけではないけれど、いろいろと考えさせられることが多く含まれているのです。

 

 老いはいろいろな問題を引き起こします。かつては当然だったことが、急にそうではなくなってしまう。そのギャップに苦しむところは、昔も今も変わらないのですね。

 

1418冊目(今年76冊目)☆☆☆☆

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