『チョコレートコスモス』 恩田陸
今回のテーマはミステリでもホラーでもなく、演劇!
後半で描かれるオーデション風景は、もの凄い緊張感を感じました。
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今回のテーマはミステリでもホラーでもなく、演劇!
後半で描かれるオーデション風景は、もの凄い緊張感を感じました。
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お母さんの暎子さんが理由不明の昏睡状態になってしまった所から物語が始まり、「裏返す」とか「包む」という戦いが始まるのですが、なぜそうなってしまったのかがよく分かりませんでした。そして、この作品はこれまでの常野物語よりも冷たい世界だなぁという印象を持ちました。
人間を「裏返す」と、それまでのことは全く忘れてしまって、全く違う人格になってしまう。という部分にはかなり興味が持てました。そうやって全く違う人間として暮らしている人が、其処彼処にいるのではないか?という気がしてきたんです。
学生時代はあんなに元気で明るかったのに、ある時期から壊れてしまった友達のことや、音信不通になってしまった友達のことを考えてしまいました。彼らは実は裏返されてしまったんじゃないのか?なんてことも考えてしまったし。
暎子さんが眠っていた村は、わたしのイメージの中では プリズナーNo.6 のようなイメージが広がってきました。(古すぎて分からないって?)大きな白い建物があって、でも人の気配がない、そんな不気味なイメージ。何故そうなったのか分からない不条理な感じ。こういうのも恩田さんらしい世界なのかな?
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まずはタイトルに一言。タンポポって、漢字で書くと「蒲公英」だったなんて、この本を読むまで知りませんでした。m(__)m 英語だと「dandelion」ってのは知ってるのにねぇ。
常野の人達に、また会うことができました。今度は大正の頃でしょうか?
福島のとある平和な村のお屋敷に住む、病弱でほとんど外に出たことがない美少女と、彼女の話し相手になって欲しいと頼まれてやって来た同じ年頃の少女が、主人公です。
田植えだ、稲刈りだと、忙しいときにはみんなで力を合わせて働き、季節ごとのしきたりを守り、自然と共に生きていた時代って、現代よりもずっと人間らしい生活をしていたような気がする。そりゃ現代はとても便利だけど、その便利さに流されてしまっているって怖いなぁとも思う。
誰かのことや、何かについて「記憶する」時に、それがとても大事なものの場合は「胸にしまう」という事がありますよね。こういう時にしまうものは、ある一瞬の出来事であることが殆どなのだけど、常野の人達は、誰かのことを丸ごと「しまう」という行為をします。
自分のことを「しまって」もらうとしたら、誰にして欲しいだろう?自分が誰かのことを「しまえる」としたら、誰のことをしまいたいだろう?そんなことを考えさせてくれる物語でした。
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恩田さんはあんなに本をたくさん書いているのに、その合間にきっちり本を楽しんで読んでいる。酒も好きだし、オイシイものも好きだし、映画も見るし、音楽も楽しんでいる。そんな生活が文章の中から垣間見えるのが楽しい。
小学生の時に読んだ「名探偵カッレくん」や「若草物語」や「ナルニア国物語」、クリスティ、キング、萩尾望都、一条ゆかり、赤川次郎・・・ etc. とにかく読んで読んで読みまくった結果が、彼女の小説になっているのでしょうね。
わたしもスティーブン・キングのファンなので、「ファイヤー・スターター」「デッド・ゾーン」「クリスティーン」「クージョ」どれもこれも一気に読んだ本ばかり。そうか、やっぱりキングが好きだったんだと妙に嬉しくなってしまいました。
あの冷たい空気感は、キング譲りなのでしょうかねぇ?
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それでは、これからあなたにいくつかの質問をします。(本文より抜粋)
郊外にあるスーパーMで、ある事件が起きた。大勢の死傷者が出る事故であったにも関わらず、その原因が分からない。その調査のために様々な人がインタビューを受けるのです。
何か事件があったとき、目撃者の証言というのが必ず取り上げられるけど、その人のいた場所や心理状態によって、全く違う証言が出てくる。逆に10人が10人同じ事を言ったからといって、それが本当に正しいかどうかは分からない。
このストーリーの怖いところは、誰も真相を知らないということだと思うんです。普通の事件だったら、誰か犯人がいるとか、誰かが点検を怠ったとか、天変地異とか、何かしらの原因があるでしょ。でも、ここでは誰が悪いのか、何が悪いのかがちっとも分からないんです。
世の中には分からないことってのがたくさんあるけれど、大抵は「まぁ、いいか」で済んでしまいます。でも、このストーリーのように大事件であるのに、本当のことが分からない時、人間はどうそれを対処するんでしょう?結局諦めるしかないってことなんだでしょうか?
ここ数年変な事件が増えています。今年になってからもJR西日本の事故や、振り込め詐欺の仲間割れや、いじめを苦にして自殺した子や、借金が払えずに埋められてしまった人や、何だかよく分からない事件がたくさん起きてます。
犯人や原因が分かっているようでいても、実はもっと違う理由があるんじゃないかと思えるようなこともたくさんあって、やっぱり世の中って分からないことだらけじゃない?と思えてきます。
それでも、分からないなりに色々考えてみると、最初は思いつきもしなかった事が分かって来たりすることもあるから、ついつい「どうして?」と考えてしまうんですよ。
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27人と1匹、1冊の小説の中にこんなに大勢の登場人物が出てくるなんて、それだけでビックリでした。バラバラに登場する彼らが、最終的に一ヶ所に集まっていくところが実に見事です。
これまで読んできた恩田さんの作品は、割とシリアスなものが多かったのだけど、こういう面白いのも書けるんですねぇ。新しい発見です。
最後に全員が集まってくる東京駅って、たしかにこういうストーリーにはピッタリですね。遠くからやってくる人、待ち合わせする人、ちょっと買い物に来る人、通勤の人、いろんな人がやって来ます。
最初に現れる俳句好きのおじいさんが待ち合わせに指定される「動輪の輪」って、シブイなぁって思ったんです。普通、待ち合わせの場所って「銀の鈴」でしょ。「動輪の輪」で待ち合わせをしている人って、おじさんが多いんですよね。そのへんもよく観察してるなって感心しちゃいました。
松本清張が「点と線」を書いたので有名なステーションホテル、おいしいものがたくさんある大丸の地下、駅のすぐ側にある東京中央郵便局、この本って東京駅の観光ガイドとしても使えるなって感じです。
佳代子さんと正博さんの思い出の場所である郵便局のポスト、これは気が付かない人が多いんですよ。恩田さんは、どうしてこれに気がついたんでしょう?東京駅周辺を歩いてロケハンしたのかな?
'06.8.28 追記
これが例のポストです。
かなり大きいんですけど、目立たないんですよ!
ポストは赤だという固定観念が強いからでしょうか?
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「さまよえるオランダ人」「星々の彼方への旅」「元号制定」「ボストンブラウンブレッド」「二万五千分の一地形図はこうして作られる」現場に残されたヒントはこれだけ。
キューブリックの「2001年宇宙の旅」が企画された段階での仮の名称が「星々の彼方への旅」だったんですね。1965年にこの映画の制作発表が行われていたなんて、全く知りませんでした。
「元号制定」も不思議な話です。最初は「光文」という元号が予定されていたのに、スクープ事件が起こって「昭和」が使われるようになったなんて、これまた初めて知りました。
恩田さんの小説は、ストーリー自体も不思議なんですけど、取り上げられるエピソードや、映画の話などが不思議な雰囲気をかもし出してくるんです。何となく薄暗いような、冷たい風が吹くような、そんな空気感を感じるんです。
この本は、どこまでが真実で、どこからが空想なのか、よく分からないところが魅力だなぁって思うんです。
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10年前の今日、仕事場にいたわたしは、昼食で外に出るまであの事件を知らなかった。今だったらインターネットや携帯メールでもっと早く情報が伝わったのだろうけど、あの頃はTVやラジオのニュースでしか情報を入手できなかった。
ランチタイムのレストランで、TVがニュースを伝えていた。「地下鉄で大勢の人が倒れる事件が発生しました。現場はまだ危険な状況にあり地下鉄は止まっています。」何なんだろうと思った。サリンという物質のことも、それが恐ろしい殺傷力を持つことも、その後初めて知った。
殺人事件について語られるこの小説を今日読むというのは、何かの因縁なんだろうか?
この小説では、いろんな人の証言で積み重ねるっていう手法が取られているのだけど、同じ物を見てもひとりひとり違うことを感じるんだなぁって改めて感じる。同じ人間の評価をしているのに、ある人は「あの人は素晴らしい」と言い、別の人は「あの人は嫌い」と言う。
全く同じ考え方をする人はこの世にはいない。どんなに細かく観察しても、マネしてみても、全く同じには成り得ない。憧れの人に近づこうとしていくうちに、憧れの人は全然違う物に変わってしまっていたりして、同じ人間であっても同じであり続けることはないんだもの。そんなことを考えてしまった。
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山奥のホテルで3人姉妹が待っている。そこに招かれるのは毎年ほぼ同じメンバー、豪華なホテルで優雅な食事や時間を過ごせるのに、招かれる人はみな緊張した面持ちでホテルへ到着する。家族やごく親しい人々しか呼ばれていないのに、なぜかピリピリした空気が充満している。
この小説の面白さは、同じ光景をを複数の人間の目から見ているということだと思う。同じ光景を見ても、人によって受け止め方が違う。見ている角度がそれぞれ違うから、ある人にしか見えていないこともある。そして頭の中で実際に起こっていることとは全く違うことをイメージしていることもある。
何人もの人が語ることによって複数のイメージが重なり合い、どれが本当なのか、どれがウソなのか、それともすべてがウソなのかが段々分からなくなってくるのです。3人姉妹が客たちの前でする話と同じように、つまらない真実よりも、面白いウソの方に人は惹かれていくってことを、この小説は教えてくれます。
たとえウソの話であっても、それを聞かされていくうちに、なんだかそれが正しいような気がしてきて、「そうか、そうだったんだ!」と信じられれば、それが本当の事になってしまうってことは、ある日突然自分が違う人になってしまうのかもしれないってこと。恐いような気もするけど、そうなってみたいという願望もある自分に気が付いてしまったのです。
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この短編集には2つの楽しみ方があると思うのです。1つ目は、まだ恩田さんの作品を読んだことがなくて、どんな作風なのかな?という状態で読む場合。いろんなパターンの作品があるので、恩田さんの作品の試食会的な楽しみ方があると思います。
2つ目は、すでに恩田作品を知っている場合。長編が多い恩田さんの世界が、短篇の中にいかに凝縮してるのかって所を感じて欲しいと思うんです。そして全部で10編ある中の2編の書き下ろし作品は、思わず「あれだ!」とついにやにやしてしまうんです。
「ピクニックの準備」は、あの「夜のピクニック」の予告編として書かれたのだけれど、雑誌掲載がボツになってしまったため、この短編集で初めて世に出たんですって。ピクニックのワクワク感がとてもいい感じの作品だなぁって思います。
もう1編の書き下ろしは表題作の「図書室の海」です。これはあの「小夜子」の番外編で、関根秋のお姉さんの「関根夏」が登場します。高校生の頃って、こんな感じだったなぁって不思議なノスタルジーを感じる作品です。
すべての作品にも、恩田ワールドが広がっています。淡々としていて、日常の出来事かと思わせておいて、どこからかジワジワと怖さが広がってくるって感じがいいですよね。
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常野の人たちは、普通の人たちとはちょっと違っている。一見普通の人のように暮らしているけれど、それぞれちょっとずつ違った秘密を持っている。一族の人が大勢集まると、その秘密がばれてしまいやすくなるから、なるべくバラバラに暮らしている。
この小説を読んでいくうちに、キングの「ファイヤー・スターター」を思い出してしまった。本人の意志とは別に持ってしまった能力を、当局から危険だと判断されて、追い回されてしまうあの話だ。
彼らは静かに暮らそうとしているのに、まわりがそれを許さないのは何故なのだろう?特別なものに対する恐怖?それとも、そういう能力を持っていないひがみ?人それぞれの違いを極端に意識することの怖さを感じてしまう。
特殊な記憶能力を持っていたり、とんでもない能力を持っていたりして、それを知られてしまうと困ったことになるかもしれないので、できるだけそれを知られないようにして生きていくって、他人事としてはスリリングだけど、実際自分がそうだったらかなりたいへんなのだろうなぁと思う。
世の中に同じ人は2人といないわけで、それぞれが違う能力を持っている。走るのが速いとか、記憶力が優れているとかといった能力だったら、何の問題もない。でもそれが未来を知る力だったり、人の頭の中が見える能力だったりすると、とたんに警戒されてしまう。
その能力が優れていれば優れているほど、人から怖がられる。人から警戒される。時には隔離されてしまう。
常野の人たちが静かに生きていくのは、本当に難しいのだろうなぁと思えてくる。
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高校生の女の子が3人で夏休みに合宿をしようと決めた。合宿をすることにした家で昔、迷宮入りになっている殺人事件があった。その事件に関わる新しい事件が発生する。
3冊に分かれているけれど、そんなに厚い本ではないので一気に読めた。1冊ごとに視線が変わるところが面白いなぁと思う。
主な登場人物はみな高校生。彼らが子供の頃の事件を思い出す時、そこには複雑な心理が見え隠れする。親はまだ子供だと思っていても、子供の方は結構複雑なことを考えていて、親が思いつかないようなことを胸に秘めている。親の方も、子供にはよく分からない理由で不思議な行動をする。お互いに求め合っているはずなのに、それぞれの心がすれ違ってしまうのは何故なんだろう?
子供の時の思いは忘れていたようでも、ずっと心の奥に隠れている。そして奥に隠れたま ま、その後の行動を邪魔することもある。それがトラウマというものだ。それが何であるのかをを思い出せたら、本来の自分に戻れるのかもしれない。
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