『代筆屋』 辻仁成
手紙を書きたい。でも自分では書けない。そういう人達が代筆屋に手紙を書いてもらいたくてやってくる。恋の手紙もあれば、断りの手紙もある。代筆屋は、その手紙を書くために依頼者の話を聞く。そこには人生があり、生活があり、その人自身がいる。
メールや電話は確かに便利だけど、それだけでは伝えられないことってあるのよね。直接会って話をするという方法もあるけれど、それが出来ないときには、手紙はとても有効な方法なのよね。だけど、みんな手紙をもらうのは好きなくせに、手紙を書くのは面倒だって言う人が多い。それって、どういうことなんだろう?手紙を書くには言葉を選ばなければならないし、汚い字ではイヤだし、なにより、どう書いていいのか分からない事なんだろうな。
でも、もらう側として考えてみれば、少しくらい字が汚かろうが、何だろうが、手紙や葉書をもらうということ自体が大事であり、うれしい事なのよね。
この本に出てくる代筆屋のように素晴らしい文章は、わたしには書けないけれど、でも、わたしにしか書けない手紙ってのがあるはずだから、手紙を誰かにだそうかなって気持ちになってきた。
辻さんの文章は色々な変化をしながら、いつも不思議な力でわたしの心を揺さぶってくれる。彼の文章ってのは、この代筆屋の延長線上にあるんだろうか?誰かに成り代わって、その誰かの人生を語るって作業は、時に過酷で、時に楽しい作業なのだろう。小説を書くということは、代筆屋の心を持ち続けるということなのだろうか?
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絵文字だ、顔文字だなんていうけど、やっぱり、「ぬくもり」は、メールだと伝わらない。読み安いことは確かだけど・・・。辻さんは、好きな作家です。「白仏」よかったなあ。
もしよければ、うちのプログにも遊びにきてください。お互い、文学を通して、いろいろ問題提起ができたら、素晴らしいと思います。
投稿: kensuke | 2004年11月17日 (水) 01:50