『もっと、わたしを』 平安寿子
この本の中には5つの短篇があるように見えて、実は1つのストーリーなのです。登場人物それぞれの人生に、それぞれの幸せや不幸があって、まったく関係なく生きているようでいて、実は見えないところでつながっている。そんなことを考えさせられる一冊です。
要領のいい人、悪い人。お金持ちな人、貧乏な人。頭のいい人、そうでない人。いろんな人が世の中にはいます。頭は良くなくても要領がよくて、そこそこお金持ちだったり、頭はいいのに、要領が悪くて貧乏な人だったり、頭もいいし要領もいいのに、男運だけわるかったり、世の中に同じ人って絶対にいないんですよね。他の人がうまくやったからって、それをマネしたって同じようにうまくできるとは限らないしね。
自分の人生を運がいいとか、悪いとかで済ませてしまっていいのかなって思います。どんな結果が出たとしても、それを選んでいるのは自分なんだからってことに気付かないと、一生同じ事の繰り返しになってしまうのかもって思います。
「忙しくって」っていつも言っている人がいるけど、それって自分の要領が悪いだけなのかもしれないし、実はヒマが怖いだけなのかもしれないし、タダの口ぐせかもしれないでしょ。自分の現在の状況が、どうしてそうなってしまうのかってことを、一度冷静に分析した方がいいんじゃないの?って声を掛けてあげたい人が沢山いるけれど、そういう人に限って聞く耳を持ってないのよね。余裕がないのかな?それとも自分に自信がないのかな?
この本に登場する人達って、そんな感じの人ばかり。悪い人じゃないけれど、素直じゃないなぁっていう人ばかり。大人になっても素直さを持ち続けるのって、そんなに難しいことなんだろうか?
「もっと、わたしを」という題名は、最初は不思議だなと思ったのだけど、読み進むうちにとても納得してしまいました。「もっと、わたしを分かって!」だったり、「もっと、わたしを愛して!」って、みんな心の中では叫んでいるのに、口に出して言うことができないもどかしさ。言えたとしても、分かってもらえないもどかしさ。そんな気持ちをどうしていいのか分からない人達って、世の中に多いんだろうなぁっていうか、ほとんどの人がそうなんだろうなぁって思うのです。
トラックバック先
本のちいさな花束
しんちゃんの買い物帳
粋な提案
« 『知っているつもりで知らない世界地図』 インターナショナル・ワークス | トップページ | 『マグカップで1人ごはん』 荻原悦子 »
「日本の作家 た行」カテゴリの記事
- 『怪談えほん4 ゆうれいのまち』 恒川光太郎 259(2023.09.16)
- 『その落語家、住所不定。』 立川こしら 247(2023.09.04)
- 『ある行旅死亡人の物語』 武田惇志、伊藤亜衣 249(2023.09.06)
- 『京都「私設圖書館」というライフスタイル』 田中厚生 244(2023.09.01)
- 『まちの本屋』 田口幹人 242(2023.08.30)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 『もっと、わたしを』 平安寿子:
» もっと、わたしを / 平安寿子 [書庫 〜30代、女の本棚〜]
最近書店でも見かける事が多くなった作家、平安寿子。
図書館で手にとり、最初の1頁を見て面白そうだと感じ借りてみた。
新しい作家を手にするとき、最初の1頁の印象で決めるのは私だけだろうか?
文体、文字の並びなどを見て自分と相性が合うか否かわかると思う。 [続きを読む]
» 『もっと、わたしを』 [本のちいさな花束]
もっと、わたしをposted with 簡単リンクくん at 2005. 8.25平 安寿子著幻冬舎 (2004.1)通常2??3日以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る
『いけないあなた』『ノー・プロブレム』『なりゆきくん』『愛はちょっとだけ』『涙を飾って』の5編
からな... [続きを読む]
« 『知っているつもりで知らない世界地図』 インターナショナル・ワークス | トップページ | 『マグカップで1人ごはん』 荻原悦子 »
コメント