『ブルータワー』 石田衣良
ライブラリアン(人工知能)であるココは、とても優秀な知性を持っているのに、禁則事項を守ることしかできない。それを破って欲しいシューはこう叫ぶ。
そうじゃない、ココ、きみは自分が独立した人格であるといった。いいか、ただのプログラムやAIでなく、ほんとうの人格なら自由に行動できるはずなんだ。間違ったものなら、上位の命令にも逆らうことができるはずだ。(本文より抜粋)
やってみる前から規則があるからダメだって言ってしまいがちだけど、何かを変えようと思ったらそれを打ち破らなけりゃならない、誰かに「そうじゃない」と背中を押してもらうことによって、それが壁ではなかったことに気付くことがあるんだ。
このストーリーは、あの9.11の事件に触発されて書かれた石田さん初のSFです。200年先の未来の社会は、「黄魔」と呼ばれる強力なウィルスによって崩壊寸前になっているのです。この「黄魔」が自然発生したものではなく、生物兵器として開発されたものだというところが、現実の世界にも存在しそうな恐怖感を感じます。
ある意味では冷戦時代の方が現在よりもパワーバランスは取れていました。そんな今、世界は大きく変わっていくのでしょう。この本で描かれているような未来になってしまう可能性もかなりあるのかなぁと思えてきます。
富めるものと貧しいものの格差が広がってしまう世界になってしまってはいけないと、みんなが気が付かなければいけないのです。そして豊かな側のエゴを貧しい側に押しつけてはいけないのです。そんなことを考えさせてくれるストーリーでした。
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