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『漢方小説』 中島たい子

漢方小説

中島たい子(なかじま たいこ)

集英社文庫

第28回すばる文学賞受賞

私たちは、何かに頼るのはいけないことで、自分の力だけで本来は生きていかなくてはいけないと思いこんでいるところがある。実際はコンタクトや毛染めや銀歯や、頼り放題で生きているのに。(本文より抜粋)

 みのりちゃんは正体不明の病気で体調が悪いんです。いろんな病院へ行ってみたけど、どこへ行っても「どこも悪くありません」と言われてしまいます。でも、確実に体調はおかしいし、最後のお願いで漢方医へ行ってみると、西洋医学では取り合ってもらえなかった自分の体の状態をピタリと読み取られてしまったんです。

 みのりちゃんは、かなり真面目な人なんでしょうね?いろんなストレスに負けまいと頑張りすぎて、結局ストレスにつぶされてしまうんです。普通のOLサンとは違って、比較的自由になる時間が多いからなんて油断していたら、逆に安定していないストレスにやられちゃったってところなんでしょうか?

 31歳という年齢もストレスの一因なんでしょうね。歳を取っているわけではないけど、決して若くはない。将来結婚するのか、そうじゃないのか?今の仕事を続けていくべきなのか、そうでないのか?今のままの生活でいいのか、良くないのか?そんなことに揺れ続けるお年頃なのかもしれません。

 最後の方に、漢方は陰陽五行説の考え方を元にしているということを、主人公が理解していく所があるんですが、この部分は小説であることを忘れて、一緒に考えちゃいました。「喜びは悲しみに勝ち、悲しみは怒りに勝ち、怒りは思いに勝ち、思いは怖れに勝ち、怖れは喜びに勝つ。」うぅ~ん、深い!

 「恐れは喜びに勝つ」という言葉は恐いですねぇ。恐怖心があると喜びを忘れてしまうってことでしょ、そういう人、わたしの周りにもたくさんいます。自分の中にも、そういう部分があるし。恐れに勝つことができる「思い」を続けるためには「怒り」を捨てなければいけないし、漢方は哲学なのかもしれません。

 漢方は西洋医学と違って即効性はありません。そのかわり、長い時間をかけてジワっと効いて、本質的なところを変えてくれるものですよね。この本も、読み終わってからジワジワっと面白さがよみがえってくる漢方のような本だなって思います。

 最後に、この本の装幀と装画は南伸坊さんです。中身にピッタリな、すてきな絵だと思いませんか?

 

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ひなたでゆるり
どくしょ。るーむ。

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コメント

健康オタク気味な私は前から気になっていた『漢方小説』。
あんまり新刊(もう出版は少し前だけど・・・)では買わないのですが、とうとう買ってしまいました。
楽しみにして読んでみたいと思います。

Rokoさんもマイレコのメンバーになられたのですね。
わ〜い!お仲間です♪♪(笑)
マイレコに投稿したいのですが、これだ!と思える作品に出会えず、なか×②投稿できません(汗)
あちらでもよろしくお願いします。

りーふいさん☆
コメントありがとうございます。
この小説って、漢方入門っていう感じもします。楽しんでくださいね。
低血圧なわたしは、最近漢方薬デビューしました。
タイミングで読んだこの本には、セレンディピティを感じます。
マイレコのほうでも、よろしくお願いします。m(__)m

TBさせていただきました。
わたしは、この本を読んで以来、漢方が気になります!
「漢方入門」、確かに☆
漢方には今までほとんど縁がなく、新鮮な思いでこの本を楽しみました。

とかげさん☆コメント&TBありがとうございます。
とかげさんはお若いんですね。
この主人公くらいの歳になると、体もだけど精神的に不安定になる人が多いんですよ。
この本で予習しておくとイイかもしれませんネ。

いつからか人間は自力で生きていけなくなりました。
私もコンタクトがなければ外出できません。(^^;)
今年、みのりさんと同い年になります。
用心せねば・・・!

すぅさん☆コメント&トラバありがとうございます
何かに頼って生きているんだって自覚することが大事なんだって思います。
そして、何でもいいから大好きなこと、熱中できることがあればストレスに倒れることはないと、わたしは信じています。

ストレス、侮れないです。
子供が小学校に入学して、親もなれない日々。
兄弟の上履きを間違えて持たせたり、忘れ物のチェックをしなかったり、ミスばかりで目の周りが痙攣してしまいました。
友達に話してスッキリしたら治ったのですが、こういうところから心の病気になるんだって思いました。

ななさん☆いらっしゃいませ

ボヤキって大事ですよね。誰かに聞いてもらうと、それだけでスッキリ!
「自分がやらなくっちゃ!」という気持ちが空回りしちゃう事って多いんですよね。
「人に任せられることは任せちゃおう」って開き直っちゃうと楽なんだからぁ!

なんだかTBが送信失敗するので…ごめんなさい。
31歳になったらまた読んでみたい本です。これは買わなくっちゃ!

chiekoaさん☆
こんなことがあるんだってことを本で予習できていれば、きっと爽やかな30代を向かえられますよ!(^^)//

Rokoさん、こんばんは!
トラバありがとうございました。
最近、あまり体調がよくないので、漢方に頼ってみようかなぁ~なんて思っています。
陰陽五行説で人間の感情まで説明できるとは知りませんでした!
でも、上手いこと説明できてるんですよね。
深いですね~東洋医学って

エビノートさん☆こんばんは。
身体と相談しながら治療していく漢方って奥深そうです。
体調が悪いと、やる気まで無くなっちゃいますものね。
漢方で元気になって下さいね。

こんばんわ^^TBさせていただきました。
この作品を読んで、漢方に興味を持ちました。
私は結構緊張とかストレスが胃腸に来る人なので、即効性も必要ですが、漢方の方があってるような気がしまして。
ストーリーも良かったですね~。
面白かったです。
何だか奥深さも感じました。

苗坊さん☆トラバ&コメントありがとうございます。
この本も、漢方みたいにジワジワ効いてくる本でしたね。
それにしても、身体のことで悩みを持っている人ってこんなに多いんだってことにビックリしちゃいました。

こんばんは。
私も数年前に原因不明のめまいに襲われて漢方を服用したことがあります。
漢方って個別に処方されるんですね。
自分の体のことを知ることも大切なんだなと思いました。
じんわりと癒される作品でしたね。

ia.さん☆こんにちは
わたしも「めまい」で困っていた時に、漢方のおかげで治ったことがあります。
薬もだけど、自分の体調についてゆっくり考える時間を持つということも大事ですよね。
そして、それを理解してくれる人がいるということも。

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