『ユージニア』 恩田陸
10年前の今日、仕事場にいたわたしは、昼食で外に出るまであの事件を知らなかった。今だったらインターネットや携帯メールでもっと早く情報が伝わったのだろうけど、あの頃はTVやラジオのニュースでしか情報を入手できなかった。
ランチタイムのレストランで、TVがニュースを伝えていた。「地下鉄で大勢の人が倒れる事件が発生しました。現場はまだ危険な状況にあり地下鉄は止まっています。」何なんだろうと思った。サリンという物質のことも、それが恐ろしい殺傷力を持つことも、その後初めて知った。
殺人事件について語られるこの小説を今日読むというのは、何かの因縁なんだろうか?
この小説では、いろんな人の証言で積み重ねるっていう手法が取られているのだけど、同じ物を見てもひとりひとり違うことを感じるんだなぁって改めて感じる。同じ人間の評価をしているのに、ある人は「あの人は素晴らしい」と言い、別の人は「あの人は嫌い」と言う。
全く同じ考え方をする人はこの世にはいない。どんなに細かく観察しても、マネしてみても、全く同じには成り得ない。憧れの人に近づこうとしていくうちに、憧れの人は全然違う物に変わってしまっていたりして、同じ人間であっても同じであり続けることはないんだもの。そんなことを考えてしまった。
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素敵な本の紹介、ありがとうございます。サリン事件は金さるにとっても、ひとごとではない事件。この本も読んでみます!
追伸
ブログリンクさせていただきました。
今後ともよろしくお願いします。
あと、ブログランキングも応援させて頂きますよ♪
投稿: 金の猿(金さる) | 2005年3月21日 (月) 09:25
金の猿さん☆
コメント&TBありがとうございます。
地下鉄サリン事件から、はや10年。
何年経とうと忘れてはいけないものがあるってことを、心の奥に置いておこうと思います。
よっしーさん☆
TBありがとうございます。
人の心の闇というのは、本当に恐い物です。
自分の中にもそう言うものが潜んでいるのでしょうか?
投稿: Roko | 2005年3月21日 (月) 11:15
「日々の海に沈む・・・」のsiukaと申します。トラックバックを送らせていただきました。
つかぬ事をお伺いしますが、当方の「ユージニア」の記事へトラックバックを送っていただいたでしょうか?文字がきちんと表示されなくて削除してしまったのですが、もしRoko様から送られたものでしたら、お手数ですが再度送りなおしていただけないでしょうか?こちらの不手際もあり申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
投稿: siuka | 2005年3月22日 (火) 18:15
suikaさん☆コメント&TBありがとうございます。
化けていたのは、わたしのTBです。exiteさんへTBすると化けてしまうんだということがわかりました。m(__)m
ユージニアって不思議な世界ですよね。
全く同じ考え方をする人はこの世にはいない。
どんなに細かく観察しても、マネしてみても、全く同じには成り得ない。憧れの人に近づこうとしていくうちに、憧れの人は全然違う物に変わってしまっていたりして、同じ人間であっても同じであり続けることはないんだもの。
この小説を読み終わって、そんなことを考えてしまいました。
投稿: Roko | 2005年3月23日 (水) 14:42
あさこさん☆TBありがとうございます。
ツインピークスと恩田陸、確かに共通点があるような気がします。
これからも、どうぞよろしくね。
投稿: Roko | 2005年3月23日 (水) 14:50
当方へのTB&コメントありがとうございました。Rokoさんの「全く同じ考え方を・・・」のご意見に、なるほど、言われてみればその通りだと改めて思いました。恩田さんもそれを表現したかったんじゃないかなと思いました。
投稿: siuka | 2005年3月23日 (水) 16:11
あさこさん☆TBありがとうございます。
ツインピークス好きは、ユージニアにはまるのかも?
聖月さん☆TBありがとうございます。
ユージニアの真実は誰にも分からないって所なのかなと思います。
ただ一つ言えるのは、Everythings must change. ということだけなのでは?
投稿: Roko | 2005年3月29日 (火) 00:42
本の装丁のことは聞いていたのですが、いかんせん図書館本。今度書店で手にとってみようかな、そう思っている本です。
真実は本当に誰にも・・・
主観のよって、何かそういうものに近づけるようなそんな物語でしたね。
投稿: 聖月(みづき)(^.^) | 2005年3月29日 (火) 07:35
ahahaさん☆TBありがとうございます。
恩田さんの小説って、フランス映画のような雰囲気と、不条理さがただよっていて大好きです。
投稿: Roko | 2005年3月29日 (火) 08:55
みやさん☆TBありがとうございます。
世の中のほとんどは分からないことだらけなんですもの、すっぱりした結末の方がよっぽど嘘臭いって思うんですけどね。
投稿: Roko | 2005年3月30日 (水) 23:18
EKKOさん☆TBありがとうございます。
恩田さんの作品って、毎回意表をついてくる展開なので、いつもドキドキしちゃいます。
次のドキドキは、どんなドキドキなんでしょうか。
投稿: Roko | 2005年5月30日 (月) 23:11
やっと読みましたです。確かに、サリン事件もそうですね。私ってば全然そんなこと思い出しもしなかったです…。(しょんぼり…。)
すべてのモノゴトは変わっていく、そういうこともこの本の言いたかったことなのかもしれませんね!(ということにいまRokoさんのとこを読んで気づきました…!)
投稿: chiekoa | 2005年7月17日 (日) 23:27
chiekoaさん☆コメント&TBありがとうございます。
だから、同じ本を読んでも感想が違うのは当然。
chekoaさんのように、他の人が感じたものを、「そういうのもあるんだなぁ」って思える素直な気持ちを持ち続けられることが、一番素敵なことだと思います。
投稿: Roko | 2005年7月18日 (月) 01:05
Rokoさん、こんばんは!
TBありがとうございました♪
TBなのですが、何回か送らせてもらったのですが、反映されていなくて。
もしかしたら承認待ちになっていたりするかな?と
思っていたりします。また試してみますね!
この曖昧な終え方が好きです。真実は当人にしか結局は分からないのですものね。
投稿: リサ | 2006年5月27日 (土) 22:51
リサさん☆コメントありがとうございます。
ごめんなさーい!
ココログのシステムが不安定でトラバを受けるのに時間がかかることが多いんですよ。(^_^;
「真実は誰にも分からない」ということも、一つの結論ですよね。
それもまた恩田さんらしいなぁと思います。
投稿: Roko | 2006年5月29日 (月) 00:12