『村田エフェンディ滞土録』 梨木香歩
主人公の村田さんは土耳古(トルコ)へ考古学の研究で留学している。英国婦人の屋敷に下宿しており、この屋敷には独逸人の考古学の学者や、ギリシャ人の研究者も住んでいる。そして、ラテン語を話す鸚鵡も。
エフェンディというのはおもに学問を修めた人物に対する一種の敬称だが、彼からそう呼ばれると、ちょうど日本で商売人が誰彼となく先生と呼ぶのと同じ印象を受ける。(本文より抜粋)
今でも遠いトルコという国に、飛行機がない時代に旅した人の驚きはどんなものだったのだろう?とはいっても、色々な媒体で情報を得ているアメリカやヨーロッパと違って、現代であってもトルコという国にはビックリするものが多いのだろうなぁ!
昔、トルコ人の知人にもらった「ターキッシュ・デライト」のことを思い出してしまった。あの「ナルニア国ものがたり」にも出てくるお菓子、そのお菓子が食べたくて子供たちが魔女についていってしまう。こんな有名なものですら日本ではお目にかかれない。
テレンティウスという古代ローマの劇作家の作品に出てくることばなのだ。セネカがこれを引用してこう言っている。「我々は、自然の命ずる声に従って、助けの必要な者に手を差し出そうではないか。この一句を常に心に刻み、声に出そうではないか。『私は人間である。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない』と」。(本文より抜粋)
このことばは、わたしの座右の銘にしようと思います。すべての人間はどこかでつながっているものですもの。
この本は、とても不思議なお話なのだけど、時空を越えてトルコの街を感じることができました。そしていつの日か、トルコへ行ってみたいという気持ちが沸いてきたのです。
最後にもう一言、村田さんは 家守奇譚 の綿貫さんのお友達だったなんて。そうか、そうだったんですね。
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著者 :梨木香歩
出版社 :角川書店
読書期間:2006/07/27 - 2006/07/28
お勧め度:★★★★
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町中に響くエザン(祈り)。軽羅をまとう美しい婦人の群れ。異国の若者たちが囲む食卓での語らい。虚をつく鸚鵡の叫び。古代への夢と憧れ。羅馬硝子を掘り当てた高ぶり。守り神同士の勢力争い―スタンブールでの村田の日々は、懐かしくも甘美な青春の光であった。共に過ごした友の、国と国とが戦いを始める... [続きを読む]
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えろみさん☆TBありがとうございます。
自分が体験したわけでもないのに、「懐かしい」という気持ちになってしまう一冊でした。
投稿: Roko | 2005年3月30日 (水) 08:57
あさこさん☆TBありがとうございます。
せっかく友情を育んでも、二度と会えない人、二度と踏めぬ地があるというのは悲しいものですね。
投稿: Roko | 2005年3月30日 (水) 22:57
Rokoさん、はじめまして(^^)
トラックバックありがとうございます。
「家守奇譚」とはまた違った趣ですが、とても素敵な本ですよね。
トルコの雰囲気をたっぷりと味わえました。
投稿: 空猫 | 2005年3月31日 (木) 12:42
空猫さん☆コメント&TBありがとうございます。
お稲荷さんもイスラムの神様も、仲良しになってしまうなんて、いいなぁ。
投稿: Roko | 2005年3月31日 (木) 22:22
Rokoさん、こんばんわ!
「家守綺譚」へのコメントでRokoさんに教えてもらって読んでみました。
良かったですーーー!
異国の空気や風景画が胸に広がるだけでなく、
ラストがまた胸に迫りました。
教えてくれて本当にありがとう!!
投稿: june | 2005年6月11日 (土) 23:21
juneさん☆コメント&TBありがとうございます。
ものすごく気に入って頂けたようですね。
おすすめしてヨカッタ!(^_^)v
投稿: Roko | 2005年6月11日 (土) 23:29
そんなトルコも今年はサッカーの一大イベントチャンピョンズリーグのファイナルが行われたり、F1開催が行われたりとEUの仲間入りを目指すべく誘致がすごかった....
でもEUの仲間にはしてもらえないトルコ。
そうそう、「家守奇譚」とつながっている箇所があるんですよね。
僕の記事はそこをボカして意味深にしておきました。
そういえば、新作の「沼地のある森を抜けて」読みました?
僕は2ヵ月後に読む予定です。
(なんで2ヵ月後やねん)
投稿: takam16 | 2005年9月25日 (日) 18:40
takam16さん☆わたしも読むのはその頃になるかも?
トルコ人に聞いた話なんですけどね。「ボスポラス橋より東(アジア側)に殆どの人が住んでいて、西(ヨーロッパ側)へ働きに行く。殆どのお金は西側あり、東側は貧乏なままだ。」
面積からいっても殆どアジアだし、宗教はイスラムだし、ヨーロッパから言えば、トルコはアジアだよってことなのでしょうね。
投稿: Roko | 2005年9月25日 (日) 19:52
雰囲気がいいですよね~。
その頃のトルコがどんな感じだったのか
とてもよく伝わってくるの。
梨木さんってすごいです。
新作でてるんですか?
そりゃ読まなくちゃ~♪
私はいま、からくりからくさを読んでるところです。(*^_^*)
投稿: みわ | 2005年10月11日 (火) 00:07
みわさん☆コメント&トラバありがとうございます。
読みたい本が山積みになっていて、「沼地のある森をかけて」を読めるのはいつになる事やら。(^^ゞ
投稿: Roko | 2005年10月11日 (火) 00:15
こんにちは。
トラバ&コメントありがとうございました。
トラバをお返ししようと思ったんですけど、
何度か時間を変えてチャレンジしたんだけど、
できないみたい(^_^;)。
相性が悪いのかも~。気持ちだけ、TB返しです。
では!
投稿: ゆうき | 2006年5月 8日 (月) 11:16
ゆうきさん☆トラバはどうなっちゃたのかしらん?
お気持ち、しっかり頂きました!
投稿: Roko | 2006年5月 8日 (月) 20:53
トルコは親日家が多い、と聞いていました。
本書を読んで、ああこういう事情からなのか…、と思いました。国や民族によってものの感じ方が根本から違うということは、わかっているようで実感しがたい面もあるのですが、そういうところを上手に描いているな、と感じました。
投稿: ディック | 2007年2月25日 (日) 21:39
ディックさん☆こんばんは
トルコは今でも遠い国ですが、この物語の頃にはもっともっと遠い国だったのでしょうね。
国が違っても、民族が違っても、友との絆は断ちがたいものだと思いました。
投稿: Roko | 2007年2月26日 (月) 00:29