『サニーサイドアップの仕事術』 峰如之介、山崎祥之
サニーサイドアップという会社をご存じだろうか?基本はPR事業、つまりクライアント(顧客)から依頼された商品を世間に紹介するという仕事をしている。物を対象とする場合もあるが、才能ある人間をプロモートするという事業が一番目立っている。
サニーサイドアップが手がけている最も有名な人間は「中田英寿」だろう。日本にいる頃から伴に仕事をしてきているが、より仕事の範囲が広がったのはイタリアのペルージャへ移籍した時からだ。
「セリエAのチームへ移籍」というニュースをどう流すのか、イタリアでのインタビューはどう行っていくのか、などを事細かに決めていくことから始めたというのだが、ここまでキチンとしたシステムを作ったのは、間違えなく日本初だろう。
タレントを売るという商売をしている芸能プロダクションや、事務所ならこれまでにもいろいろあったけど、スポーツ選手のプロモーションや契約関係の代理人の仕事を行う会社というのは皆無に等しかったんです。
それに芸能プロダクションにタレントが「所属」するのとは違って、サニーサイドアップにとってのヒデは「クライアント」なんです。クライアントの希望に添って仕事を行い、対価を得るというビジネスは全く新しいビジネスだったんですね。
水泳の北島康介や陸上の為末大など、多くのアスリートや作家、ミュージシャンなどが同社と契約している。これまでのプロダクション側主体の活動ではなく、クライアントである個人が主体のプロモーション活動をやっていこうという考え方に共感した人が増えてきたということなのだろう。
「交渉人」という言葉が注目されたのは、おそらく野茂英雄がMLBへ脱出した時からだと思うのだが、まだまだ一般的な職業としては認められていない状態だ。某プロ野球球団など、交渉人を連れてきたら契約の話はしないと豪語している。
契約やお金のことに疎いスポーツ選手が、こういう仕事を専門家に委託するというのはアメリカ等では常識だ。日本でも、いつまでも鎖国状態を続けることはできないはずだ。
何かの技術がうまくなりたいなら、その専門家に技術を習う。体の調子が悪ければ医者へ行く。財務関係に疑問があれば会計士に相談する。それと同じように「交渉人」がいたり、PR業務を行う会社を使ったりするのは、ごく自然なことであるはずだ。
なんでもかんでも自分でやろうとしたら、当然限界は早くやってくる。自分が不得意なことは、その専門家に任せてしまい、自分の得意な分野に力を集中することが大事だってことに、日本は目覚めるべき時なのだと思う。
« 『野球の国』 奥田英朗 | トップページ | 『明日の記憶』 荻原浩 »
「ビジネス・経済」カテゴリの記事
- 『江戸のフリーランス図鑑』 飯田泰子 272(2023.09.30)
- 『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』 ヤニス・バルファキス(2022.06.17)
- 『自由を手にした女たちの生き方図鑑 振り回される人生を手放した21人のストーリー』 Rashisa出版 編(2022.06.29)
- 『マルチ・ポテンシャライト』 エミリー・ワプニック(2020.06.06)
- 『誰がアパレルを殺すのか』 杉原淳一(2018.06.01)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 『サニーサイドアップの仕事術』 峰如之介、山崎祥之:
» 個人ブランドの構築 峰 如之介, 山崎 祥之 『サニーサイドアップの仕事術』 [買った 読んだ 書いた! 読書ジャンキー のり太がゆく]
峰 如之介, 山崎 祥之
サニーサイドアップの仕事術
サッカーの中田英寿、水泳の北島康介ら、一流のアスリートたちと契約を結んで、そのマネジメントをするPR会社、サニーサイドアップ。
本書の前書きで、筆者は述べている。
――サニーサイドアップの基幹事 [続きを読む]
コメント