『この道のむこうに』 フランシスコ・ヒメネス
この本の主人公は、アメリカへ不法入国したメキシコ人家族の一員であるパンチート少年です。自分の国が貧しいので、アメリカへ仕事を求めてやって来たのだけれど、待っているのは厳しい労働です。収穫などで忙しい農場を転々とする毎日が続きます。
綿つみ、ブドウやイチゴの収穫など、1日12時間の労働。いろんな所を転々とするので学校へはたまにしかいけないけれど、でもたとえ1週間であっても学校へ通います。だって夢があるから。
不法入国だから、もし見つかれば強制送還です。またアメリカへ戻れる保証はありません。そんな危険を冒しながらも、家族はいつも明るく元気に働き続けるんです。なぜなら、厳しい生活ではあるけれど、ここには仕事があります。子供に教育を受けさせる環境もあります。故郷よりも様々な可能性に満ちているからです。
これは、著者であるヒメネス氏の自伝的物語です。これはそんなに昔の話ではないし、今でも同じように不法入国してくる人達がたくさんいます。農業にしても工業にしても、アメリカの底辺を支えているのはこういう人達の力なんですよね。
つい、他の国のことと考えてしまいますけど、現在の日本にも同じような世界があるんです。豊かさを当たり前のものとして育ってきている日本の子供たちに、そして大人達に、ぜひ読んで欲しい一冊です。
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