『銭売り賽蔵』 山本一力
この本の主人公、賽蔵さんの仕事は両替です。江戸時代には、今の銀行に当たるような大きな両替屋さんは数軒しかなくて、普通の人達が使うのは賽蔵さんのような個人の両替屋さんだったんです。銭座で硬貨を仕入れ、それを背負って商売をする、かなり体力のいる仕事だったようです。
江戸時代には、それ自体の価値が幕府によって保証されていた貨幣と、重さを測らなければならないものが共存していて、なおかつそれらの交換レートがかなり変動していたので、両替屋さんというのはなくてはならない存在だったんですね。
賽蔵さんは深川の人ですから、もちろん義理人情も、気っぷのよさも持ち合わせています。でもそれだけじゃありません。新しいお得意さまを開拓していくアイデアも沢山持っている人なんです。
そして賽蔵さんのお客様である江戸の人達も、いろんな知恵を絞って商売をしています。大工さんや職人さん相手の弁当屋さんが、雨の日でも売上げが上がるようにと、芝居小屋で弁当を売っていたり、値段を抑えるために安い材料を探してきたり。
担ぎ売りにもいろいろあったんですね。そばやうどんだけでなく、にぎりめしとお茶とか、白玉と氷水や麦湯(麦茶、もちろん冷たいの)とか、江戸の町にはかなりこういった人達がいたようです。こういうアイデアって、今でも使えそうですよね。
一力さんの小説には、江戸時代の庶民のパワーが溢れています。弱いものイジメなんて江戸っ子の恥、そんなことをする奴はここいらのもんじゃねぇと言い切る気っ風のよさには、いつも胸がすく思いがします。次はどんな人を描いてくれるんだろう?
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