『幸福な結末』 辻仁成
角膜移植手術をして再び光を取り戻した彼女には、1つ不思議なことがあった。それは彼女にしか見えない男性の姿がたびたび現れるということだ。何故なのか分からない。もしかしたら、角膜を提供してくれた女性の生前の強い記憶による残像なのかもしれないと医者は言う。
その幻のような男性に心惹かれ、彼女は旅に出る。死んでしまった女性はどんな人だったのか?あの男性はどんな人なのか?2人はどんな生き方をしていたのか?小さな手がかりから、少しずつ彼の存在が近づいてくる。
辻さんの小説には、いつも不思議な空気が流れています。男と女が一緒にいるのに、心はバラバラだったり、離れているのに心は一つだったり、知らないと思っていた人が実はとても親しい人だったり。
主人公は、それまでの生活を捨て、恋人との中途半端な関係を清算してしまいます。彼女が幸せになれるかどうかは分かりません。でも幸福な結末になればいいなぁという気持ちが溢れてくるラストでした。
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