『女という病』 中村うさぎ
女の自意識は、それ自体、病である。(本文より抜粋)
殆どの女性は「わたしってきれい」とか「わたしっていい人」とか「わたしってお利口」っていう言葉を自分に毎日つぶやいています。誰か他の人からかけもらえれば嬉しいけど、そんなことって余りないから、自分で自分に言い聞かせるんです、毎日毎日。
そういう気持ちを「自己満足」や「自己顕示欲」というのでしょうけど、これが無くなってしまったら、何にもやる気が起こらなくなってしまうし。有り過ぎれば、迷惑なことも多々あるということですよね。
この本に登場するのは、その自己顕示欲が妙な方向へ暴走してしまった女たちばかり。彼女たちは、被害者であり、加害者であり、異常な人であり、わたし自身かもしれない存在なのです。うさぎさんは、そういう彼女たちに興味を持ち、彼女たちが起こした事件を元にこの本を書いています。
犯罪を起こした彼女たちの行動の異常さは凄いものがありますけど、決して特殊な人が起こした事件とは思えないんです。何故なら、そこに至るまでの心理が余りにも理解できてしまうから。その加害者が自分であっても不思議ではないと思えることが多々あるんです。
うさぎさんも、自分とそっくりの心理状態を持った加害者のことを、他人事とは思えないと言っています。ちょっとだけ環境が違っていただけ。ちょっとだけ考え方が違っていただけ。それが犯罪者になるかならないかの差だって事なんです。
自己顕示欲があるからこそ、化粧をするのだし、オシャレをするのだし、ダイエットしたり、勉強したり、ウソをついたり、するのですよね。自己顕示欲が暴走したとき、わたしは何をするか分からないということを、見事に描いた一冊です。こういう本を書くために「中村うさぎ」は存在しているのだとわたしは確信しています。
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