『I LOVE YOU』
中田 永一 中村 航 本多 孝好
祥伝社
このタイトルからも分かるとおり、恋愛をテーマにした短編集です。
透明ポーラーベア(伊坂幸太郎)
いつもと違って、とんでもないおしゃべり男は出てきません。だって恋愛ものだもの。その代わりに、だけど、不思議なウンチクはやっぱり出ました!
「ホッキョクグマの身体は白く見えますが、では、その毛の色は実際には何色でしょうか?」
どこが恋愛小説なの?と思いながら読み続け、読み終わる頃には、ああ恋愛小説だったなぁと思うお話しでした。やっぱり伊坂ワールド満開です。
魔法のボタン(石田衣良)
子供の頃の遊びで、右肩の先の出っ張ったところ(ボタン)を押すと透明人間になり、左のボタンを押すと石になるというのがあって、そのボタンがすべての人に付いているといいなぁと主人公は思っている。
好きな人に初めて「好きだ」って言うのって、一番勇気が要る瞬間なのかもしれない。そんな時にこの魔法のボタンがあったら、左のボタンを押して、相手が石になっている間に告白できるのに。ねぇ、そう思わない?
卒業写真(市川拓司)
中学校の同級生に9年ぶりにばったり出合った。同級生だって事は間違いない!でも名前が分からない。そういうことってよくあるよね。相手が名乗ってくれて「ああ、そうだった」とホッとする一瞬。
中学生の頃の記憶しかないと、男の子ってもの凄く背が高くなっていたり、女の子だともの凄くキレイになっていたりして、まるで分からなくなっちゃうことってあるんだよね。そしてとんでもない勘違いをしちゃうことも。
百瀬、こっちを向いて(中田栄一)
今まで女の子と付き合った経験のない相原君なのに、先輩の頼みで百瀬さんと偽装でつきあうことになってしまった。ちょっと嬉しいような、でもどうしていいか分からないオクテな彼は、一生懸命がんばるんだけどね。
そんな彼が放った最後の一言は、百瀬を振り向かせた。やるじゃん、相原君!
突き抜けろ(中村航)
彼には付き合っている彼女がいて、週に1度はデートもするんだけど、あんまりドキドキするようなことは起きない。彼は友達の友達である木戸さんという変わった人に出会ってショックを受ける。決まり切った生活なんてものとはかけ離れた木戸さんのことが、気になってしょうがなくなってくるんだ。
Sidewalk Talk(本多孝好)
僕は彼女を待っている。最近は待つことにもなれて、文庫本がいつも鞄の中に入っている。今日は特別な日だから、銀座で待ち合わせ。今日が最後のデートだから。
どのストーリーもそれぞれに面白いんだけど、わたしが一番気に入ったのは、最後のSidewalk Talk 。出会いがあるから別れがあって、別れがあるから出会いがあるんだなぁって、ちょっとジーンとしちゃうラストでした。
« コーチの森 近日開店 | トップページ | 『不機嫌なメアリー・ポピンズ』 新井潤美 »
「日本の作家 アンソロジー」カテゴリの記事
- 『不思議の扉 時をかける恋』 大森望 編 25-18-3414(2025.01.21)
- 『私の身体を生きる』 24-369-3395(2024.12.29)
- 『本を贈る』 笠井瑠美子 他 24-11(2024.01.12)
- 『私たちの金曜日』 有川ひろ、恩田陸、桐野夏生、田辺聖子、津村記久子 104(2023.04.14)
- 『いやし』 <医療>時代小説傑作選 84(2023.03.26)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 『I LOVE YOU』:
» 「I love you」 [ナナメモ]
I love you男性作家6人の恋愛アンソロジー。「透明ポーラーベア」伊坂幸太郎「魔法のボタン」石田衣良「卒業写真」市川拓司「百瀬、こっちをむいて」中田永一「突き抜けろ」中村航「Sidewalk Talk」本多孝好豪華です。それぞれが「らしい」ストーリだし素敵。一つずつは... [続きを読む]
» I LOVE YOU [苗坊の読書日記]
I love you
「透明ポーラーベア」伊坂幸太郎
優樹は彼女の千穂と動物園にいた。
そこで、かつての姉の彼氏だった富樫さんと再会する。
「魔法のボタン」石田衣良
隆介は彼女に振られ、落ち込んでいた。
こういうときに呼びつけるのは、幼馴染の萌枝。20年を越える友人. [続きを読む]
» 『I LOVE YOU』 [読書日和 ]
これから恋愛小説を読むぞ、と思うとどうも身構えてしまいます。 何故って、照れくさ [続きを読む]
» 「I love you」伊坂幸太郎 他 [本のある生活]
I love you
「現在もっとも注目を集める男性作家たちが紡ぐ、至高の恋愛アンソロジー 」といわれたら、読みたくなります。何よりも伊坂さんが恋愛小説を書く!というのが驚きで、ほとんど伊坂さんの作品目当てで読みました。だって「I love you」なんて、おそろしくスト. [続きを読む]
» 「I LOVE YOU」 中田永一=乙一であることの検証 [雑板屋]
【ご贔屓男性作家の恋愛アンソロジー】
・伊坂幸太郎「透明ポーラーベア」
・石田衣良「魔法のボタン」
・市川拓司「卒業写真」
・中田永一「百瀬、こっちを向いて」
・中村 航「突き抜けろ」
・本多孝好「Sidewalk Talk」
去年2005年夏、書店の新刊平台 [続きを読む]
» Love Letter / 井上荒野他 [書庫 ~30代、女の本棚~]
電子子書籍配信のサービス『Timebook Town』にて連載されたものを単行本化。
ラブレターにまつわる様々な想いを綴る恋愛アンソロジー。
『ありがとう』は石田衣良の作品。
大学に入学した僕が出会ったの... [続きを読む]
Rokoさん、こんにちは。
短い文章のなかにそれぞれの作家さんらしさがにじみ出ていましたね。
だけど出てくる女の人が完璧すぎて…男の人の理想の女ってこうなんだって思いました。
TBさせていただきました。
投稿: なな | 2005年11月10日 (木) 13:26
ななさん☆コメント&トラバありがとうございます。
>男の人の理想の女ってこうなんだって・・・
実際の女は強いからねぇ、理想が先走っちゃうんだろうなぁ。
「そんな女いないよ」って思いつつも、「男ってそういうところがカワイイんだよね」って思えてしまうんです。
男の方がロマンチックな恋愛に憧れてるのかなぁ?
投稿: Roko | 2005年11月10日 (木) 21:15
Rokoさんこんにちは。
本多さんがお気に入りなのですね!
ドライですナァww
私正直、キツイ作品もありますww
なんでこの本は、この順番なんですかね?
ぁあ〜あいうえお順なのねww
並びを変えれば、読みやすいのにナァと。
でも、どれも終わり方が面白い!
そっち行っちゃうか?!あったけれどww
投稿: brownsugar | 2005年11月11日 (金) 15:18
brownsugarさん☆わたしってドライかなぁ?
本多さんの作品の男性が一番男らしいって思えるんだけどなぁ。
あのラストって、ちょっと期待できるものがあるしね。
投稿: Roko | 2005年11月11日 (金) 22:22
読んだ本が沢山あったので、思わずTBさせていただきました^^
「I LOVE YOU」いいですよね。
私は「魔法のボタン」が好きです。
2人がじれったくて、かわいいなぁって思っちゃいました^^
投稿: 苗坊 | 2005年11月13日 (日) 01:35
苗坊さん☆コメント&トラバありがとうございます。
こういう短編集での、新しい作家さんとの出会いって嬉しいですよね。
今回は中村航さんの作品を初めて読んだんですけど、なかなかいい感じですねぇ。
投稿: Roko | 2005年11月13日 (日) 11:21
Rokoさん、こんばんわー。
男性作家の恋愛小説がずらりと並んで思ったのですが、男性作家の書く恋愛小説って、毒が少ないなぁと。
やっぱり男性の方がロマンチストなんでしょうか。
本多さんの作品は、大人ですよね。ラストにひょっとして?と思わせるところを残してるの好きです。
投稿: june | 2006年3月20日 (月) 22:15
juneさん☆コメント&トラバありがとう。
確かに男性の方がロマンチストだと思います。
女性が書くと絶対に打算的な面が出ちゃうもの。
本多さんの作品、いいですよね!
こういう感じが大好きです。
投稿: Roko | 2006年3月21日 (火) 00:15