『Love Letter』
同じテーマで文章を書いても、人によってこんなにも違うものなのかとビックリできるし。
短い文章の中で描かれた世界が、わたしの中で広がっていくような気持ちになるし。
こういうタイプの短編集って、とても好き。
面と向かっていえないから手紙に書こうと思って便箋に向かっているのに、もっとドキドキしちゃうのって何故なんだろう。
自分ではステキな事を書いているつもりなのに、とんでもない事を書いてしまったり、
書いているうちに恥ずかしくなってしまって、結局出せずじまいだったり、
ラブレターって難しい。
この短編集の中で一番気に入ったのは、いしいしんじさんの「きまじめユストフ」。
ウソの手紙を書いて詐欺を働く主人公。今の日本であれば、オレオレ詐欺みたいなものなんだけど、これがなかなかの知能犯。
そんな主人公がラブレターを書く。
誰かが自分の事を思っていてくれるという「見果てぬ夢」をもらったユストフさんは幸せもの。
でもそれ以上に、夢を見させてあげている主人公のほうが、もっと幸せなのかもしれない。
実態はウソであっても、それを夢を見ている人間にとっては、それはどうでもいい事なのかもしれない。
バレてしまえばそれまでなのに、「うまいウソならつき続けてほしい」という気持ちになってしまうのは何故なんだろう?
何かを欲しいと思った時、それを実際に手に入れてしまうと案外簡単に熱が冷めてしまう事が多いから、いつまでも手に入らないものを追い求めている方が、実は幸せなのかもしれないなぁ。
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