『さくら』 西加奈子
長男の一(はじめ)くんはカッコ良くて運動神経が良くて、クラスの女の子1人を除いて全員から「一番好き」と言われ、中学校でも高校でもモテモテでした。
妹の美貴ちゃんは、これまた殆どの男子生徒から「お前の妹紹介してくれよ」と言われてしまう美人。
主人公の次男、薫くんだけは普通の子。でもお兄ちゃんのことも、妹のことも大好きで自慢の種なんです。
お父さんが一生懸命働いて、一戸建てに引っ越して、犬を飼うことになったんです。いつもは余り主張しない薫くんが選んだ犬は、ペット屋サンで一番痩せていて大人しい犬。だけど、どうしても気に入っちゃったんです。そして付けた名前が「さくら」。5人と1匹の家族は幸せな日々を過ごします、あの日までは。
美貴ちゃんが生まれて来たときの話とか、お兄ちゃんを好きだった女の子からの手紙とか、いろんな話が登場してくるのだけれど、どれもこれも「そういうことあったよね」「あの時は、どうしてあんな事しちゃったんだろう?」なんてホノボノするような話が多くて、自分の子供の頃のことまで頭に浮かんできてしまうくらいでした。
そんな普通に幸せな家庭が、お兄ちゃんの事故をきっかけにボロボロになっていくところが、何とも悲しくてやり切れないですねぇ。それだけ全員の心がつながっていたということなのでしょうか?
わたしのまわりでも、同じようなことがありました。友達のお兄さんが交通事故で寝たきりになってしまって、それ以来中学生の息子さんがグレちゃったんです。家族って、普段は何も意識していないけれど、何か起こったときには全員でプレッシャーを受けてしまうんですね。それが心の傷になってしまうって、悲しいことです。
この一家には、さくらがいて良かった。さくらのおかげで、失っていた何かを思い出せたようですね。そんなことを思うラストでした。
P.S. グレちゃった男の子は、今はちゃんと高校に通ってます。自分が頑張らないとって思えるようになったんですって。
« 『あたりまえだけど、とても大切なこと』 ロン・クラーク | トップページ | 『渋井真帆の夢をかなえる女(わたし)になれる本』 渋井真帆 »
「日本の作家 な行」カテゴリの記事
- 『小日向でお茶を』 中島京子 116(2023.04.26)
- 『料理と利他』 土井善晴 中島岳志 87(2023.03.29)
- 『名画の中で働く人々』 中野京子 82(2023.03.24)
- 『生贄探し』 中野信子、ヤマザキマリ 41(2023.02.11)
- 『ミシンと金魚』 永井みみ 38(2023.02.08)
コメント
« 『あたりまえだけど、とても大切なこと』 ロン・クラーク | トップページ | 『渋井真帆の夢をかなえる女(わたし)になれる本』 渋井真帆 »
おはようさん♪
この作品、評判が良いですよね。
図書館で予約してみようと思います。
投稿: すみれ | 2006年2月17日 (金) 06:20
すみれさん☆おはようございます。
この本、とっても良かったです。
是非読んで下さいね。
投稿: Roko | 2006年2月17日 (金) 08:08
ほんわかピンクだったのが
一の事故以降ブラックホールに飲み込まれてしまったようで、
あまりに辛すぎて2度3度とは読めない本ですね。
投稿: なな | 2006年2月17日 (金) 14:01
ななさん☆コメントありがとうございます。
一くんの事故から後は悲しかったですねぇ。
あの元気でモテまくっていた一くんがあんな風になっちゃうなんて。(>_<)
投稿: Roko | 2006年2月17日 (金) 23:28