『インプレサリオ』 チャン・シー・ユー
インプレサリオ(impresario)とは、監督、指揮者というような意味なのだそうですが、シー・ユー・チェンはまさにその通りな人物です。
彼の生まれた家は、上海でかなり豊かな暮らしをしていたのですが、あの文化大革命が起こり、このような層の人たちはこの革命を避けてさまざまな国へ散ったのです。
彼の家族は日本に移住してきました。母親はそのときに、財産をすべて宝石にして身につけて逃げてきたのだそうですが、「小さなお前がいなければ、もっと持ち出せたのに」とよく言われたそうです。
日本の小学校に入り、すっかり日本になじんだのですが、アメリカや香港に住む親戚たちとコミュニケーションをするためには英語ができなければということで、アメリカンスクールへ転校したそうです。
そしてグループサウンズに感化され、自分でもバンドを作ってプレイしたりしている。そのときに所属していた事務所が石井好子さんのところ、というのもなかなか興味深いです。
その後、デビット・ボウイの衣装を担当していた山本寛斎と仕事をしたり、菊池武夫、ユーミンなど、さまざまな人たちに関わっていく様は、「どうしてこんなにいろいろなことができるんだろう?」と驚くばかり。(そうそう、チャンは「ユーミン」の名付け親なんだそうです。ユーミンとは中国語で「有名な人」という意味だそうです。)
ニューヨークでレストランを開いたり、東京でいくつものビルのプロデュースをしたり、福岡ドームや小樽のレストランも、あれもこれもチェンさん絡みだったんですねぇ。
ユニクロのアドバイザーもなさっているんですが、初めてユニクロを訪問したときに社内を見回して、「どうしてお宅の社員は自社製品を着ていないのか?」と柳井社長に話されたとか。こういう視点って大事ですねぇ。本当に基本的なことなのにどうも忘れがちなことってありますからね。
服装だとか、話し方だとか、人のことを表面でばかり評価しがちですけど、実はこういう気付きができる人こそセンスがある人なのだと、改めて感心してしまいました。
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