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『冒険の国』 桐野夏生

冒険の国

桐野夏生(きりの なつお)

新潮文庫

 この作品は桐野さんがすばる文学賞に応募して、最終選考まで残ったものに加筆したものです。手を加えたとはいっても、若々しい文章には新鮮さを感じます。

 

 舞台はバブル寸前の浦安です。ディズニーランドができて、新しいマンションが沢山建ち、昔からの漁港だった浦安が段々と開発されていったあのころ。漁業権を売って新しい街に移り住んだのだけど、もう一つしっくりこない家族が物語の主人公です。

 

 せっかく新しいマンションに住んでいるのに、夢に描いたようなマンションライフが送れない。それどころか、この新しい街になじむことさえできないもどかしさが、そこかしこに溢れています。

 

 今日(2月1日)の日本経済新聞夕刊に、桐野さんのインタビューが掲載されていました。

 

 70年安保やオイルショックのごちゃごちゃした時代に青春を過ごしたせいか、格差や差別には敏感なんです。~中略~ 女に限らず「割を食う人」に興味があるんです。きれいに言えば弱者。今の世の中で割を食っているのが誰かといえば、若者です。(紙面より抜粋)

 この小説の主人公である家族も、確かに「割を食っている人達」でした。そんなハズじゃなかったのに、気が付いたらマイノリティになっていたということに、気が付かないうちはまだ幸せだけど、気が付いた瞬間から人生を投げちゃったり、身勝手になってしまったり、どうしていいか分からなくなると人間は思いもよらぬ行動を取ってしまうものなんですね。

 現在の作品と比べればかなりソフトな文章ですが、心の中にある「漠然とした不安」というものの描き方はさすがだなぁと思います。みんな自分だけが置いて行かれたような気持ちでいるけれど、頑張って普通であるようなフリをしている世界。実はみんな同じなんだってことに気付かずに、それぞれがモンモンと悩んでしまっている世界、それが現代なのでしょうか?

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» 冒険の国 [まっしろな気持ち]
 かつて強く結ばれたはずの絆。こびりついた記憶。それらは、どれほどの月日が経とうとも、時代が変化しようとも、いつまでもどこまでも、人を悩ませる。そうやって時の流れから取り残された人々の、鮮明なる記憶が病巣のように広がって、心の奥底までも侵食してしまう。桐野夏生著『冒険の国』(新潮文庫)は、一人の死をきっかけに、永遠なる空白を抱えたまま、時... [続きを読む]

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