『外国人力士はなぜ日本語がうまいのか』 宮崎里司
(質問者)日本に来ている野球の大リーガー、あまり日本語が出来ないと思うんですけど、何が違うんでしょうね。
(朝青龍)ハングリー精神。
(質問者)違いますか?
(朝青龍)違うっすよ。だって日本の相撲に慣れても、日本語がしゃべれなかったら馬鹿にされてばかりでどうしようもないっすよ。(本文より抜粋)
最近、相撲人気を支えているのは殆どが外国人力士達です。インタビューに答える彼らの言葉は実に見事ですよね。ジョークや方言も交えて話す彼らの日本語は本当にうまいなぁと思います。確かに相撲のインタビューで通訳なんて考えられませんものね。
野球やサッカーの選手も大勢日本に来てますけど、こちらはいつまで経ってもカタコトのまま。力士たちとはまるで違います。
相撲という競技自体が日本語で教わるものだし、部屋に住み込みで暮らす訳ですから「24時間日本語のみ」の環境ですからね。親方、女将さん、兄弟子、ご贔屓さん、近所の人達、みんなが一生懸命教えてくれるということも大事な要因みたいです。
そして、何よりも大事なのが「モチベーション」です。強くなって出世したい → 出世したら人前に出ることが増える → 人前でキチンとした話をしたい。こういう気持ちがあるからこそ、「強い力士ほど日本語がウマイ」という公式が出来上がっていくんですね。
こういうモチベーションは、マネしなくっちゃと思います。自分という人間をより高めていくために、姿形だけでなく考え方や言葉だって高めていかないとバランスが取れなくなってしまいますものね。
わたしの周りにも外国の方だけど日本語がとてもウマイ人が何人もいます。彼らを見ていると感じるのは、「自分の思いを伝えたい」という気持ちの強さです。言いたいことがあるからこそ言葉を使う、言葉を覚えるということにつながっていくんだなぁと思います。
日本人は外国語を話すのが得意でないと良くいわてるけど、話せないのは外国語だからじゃなくて、話す内容が無いからなんじゃないかな?日本語しか話せないのに、その日本語すら怪しい人が余りにも多いんですもの。
日本語は主語が要らない言葉だから、ついつい曖昧にしがちなんですけど、主語を感じない発言って本当に多いですよね。「○○でいいや」とか「あれしようと思ってさ」なんて、これじゃ誰が何をしたいんだが意味不明ですよね。
自分は何をしたいのか?その為には何をしなければいけないのか?そういうことを毎日真剣に考えねばと思わせてくれる本でした。
« 『わがタイプライターの物語』 ポール・オースター | トップページ | 『ファイアボール・ブルース』 桐野夏生 »
「スポーツ」カテゴリの記事
- 『パラリンピックは世界をかえる ルートヴィヒ・グットマンの物語』 ローリー・アレクサンダー(2022.04.29)
- 『再起は何度でもできる』 中山雅史(2021.10.13)
- 『リアル 15』 井上雅彦(2021.08.30)
- 『ナチスの森で オリンピア1936』 沢木耕太郎(2021.08.24)
- 『スローカーブを、もう一球』 山際淳司(2021.07.25)
「ことば・コミュニケーション」カテゴリの記事
- 『うまれることば、しぬことば』 酒井順子(2022.04.21)
- 『標準語に訳しきれない方言』 日本民俗学研究会 編(2021.10.21)
- 『似ていることば』 おかべたかし やまでたかし(2021.07.01)
- 『目でみることば 2』 おかべたかし 山出高士(2021.06.20)
- 『目でみることば』 おかべたかし 山出高士(2021.06.05)
「日本の作家 ま行」カテゴリの記事
- 『ビブリア古書堂の事件手帖 7 栞子さんと果てない舞台』 三上延(2022.05.14)
- 『はみだす緑 黄昏の路上園芸』 村田あやこ (2022.05.11)
- 『ビブリア古書堂の事件手帖 6 栞子さんと巡るさだめ』 三上延(2022.05.04)
- 『オトーさんという男』 益田ミリ(2022.05.03)
コメント