『ナポリのマラドーナ』 北村暁夫
1990年7月3日、ナポリ。地元イタリアとマラドーナ率いるアルゼンチンとのサッカーW杯準決勝。
なぜ、この対戦がサッカーの試合を越えて、国家分裂の危機として人々の関心を集めたのか。
「南部問題」や移民の歴史から、その理由を探る。(表紙より)
日本人のわたしたちが世界のニュースを見て分からないことといえば、なんといっても宗教と民族問題ですねぇ。ダ・ヴィンチ・コードが、宗教感が違うわたしたちには難しかったように、ヨーロッパや南米の民族問題って、「?」なことだらけです。
イタリアでは、北部や中央部と比べて南部地方は経済的、社会的に後進的な状態にあり、それがイタリア全体の発展にとって妨げになっているという認識があるのだそうです。マラドーナが当時在籍していたナポリはその南部に属しています。
昔から南部は犯罪者が多いだの、貧乏だのと、他の地域から差別的扱いを受けています。だから南部の人達は、イタリアに属していながら、イタリアに敵意を持っているんですね。
アルゼンチンvsイタリアの試合は、純粋にサッカーという視点では、サルバトーレ・スキラッチ vs ディエゴ・マラドーナということで話題になりました。でも、南部を含まないイタリア vs イタリア南部の英雄マラドーナ率いるアルゼンチン、という側面もあったのですね。ナポリ市民がイタリアを敵として扱うのではないかと、大きな話題になったのだそうです。
歴史的にいっても、イタリアとアルゼンチンというのは深い関係があるのですね。19世紀後半から20世紀前半にかけて、イタリアからアルゼンチンへ200万人以上が移民したのです。結果として、アルゼンチンへ流入した移民のうち、イタリア出身者は全体の4割も占めるというのです。
ところが20世紀の後半にアルゼンチンの経済が破綻し、イタリアに働きに行く人が増えたというのです。人の流れが逆になってしまったんですね。ただし移民ではなく、出稼ぎが多いのだそうですが、この2つの国の縁は相変わらず深いんですねぇ。
国単位で戦うワールドカップですが、出場国の名前を見るだけでも様々なことを考えさせられます。オリンピックではグレート・ブリテンとして参加しますけど、ワールドカップの場合はイングランド、スコットランド、ウェールズは別の国として戦います。ドイツはかつて東と西に分かれていましたが、現在は1つの国に戻りました。
ロシアは分裂し、ユーゴスラビアもいくつかの国に分裂しました。そのうちの一つセルビア・モンテネグロは今回出場してますけど、次回からはセルビアとモンテネグロに分裂するのだそうです。
ワールドカップ大会中に、世界について考えるヒントをいろいろ掴みたいなぁと思います。
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