『小説は電車で読もう』 植草甚一
植草甚一スクラップ・ブックシリーズのこの本は、1979年に出版されたものの復刻版です。いつもと違って、JJおじさんは日本の中間小説を読み倒しています。
「オール読物」とか「小説新潮」といった雑誌を、小説1編ずつにバラバラにして読むのだというのですが、読み方が並みじゃないんですよ。小説の一覧表を作って、どんどん評価を付けていくんですが、1ヶ月の間に9誌も読んでしまうんです。もちろん、これ以外に洋書も読んでるし、雑誌もチェックしてるし、ホントに読書が好きなんだなぁ!
それまでは「読まず嫌い」だったという池波正太郎の時代物を楽しんだり、田中小実昌の小説にニヤニヤしたり、この作家は五木寛之の影響を受けてるなぁなんて感想を言ってたり、当時はこんな人達が売れっ子だったのかなぁなんて想像しながら読み続けました。
電車の中で小説を読んでいて、降りる駅になってもまだ読み終わらないと、そこで途切れるのが嫌なので、ホームのベンチに座って本を読み続けるなんてあたりは、「わたしも、やってる!」って嬉しくなっちゃいました。
映画やジャズの話ももちろん出てきます。「ヒッチコックの今度の映画はいいねぇ」とか「デューク・エリントンはドンドン若返っている」なんて、セリフにJJおじさんらしさを感じます。
そして大好きなコーヒーについての話も。京都のイノダのコーヒーは素晴らしいって絶賛しています。ここは高田渡さんの曲で有名になったのですが、わたしも一度行かねばと今年の初め頃から思っていたお店です。そうか、JJおじさんもご推薦とあらば、行かねばならぬ!
それにしても、JJおじさんの好奇心っていうのは底なしですね。何か面白いテーマを見つけると、ドンドン突っ込んで行っちゃう。こういうタイプの本を読むぞ!と決めたら、これでもかって言うくらい読み進むし。ジャズが好きになれば、トコトン聴き込んじゃう。
高校生の頃にJJおじさんに出会ったわたしは、勝手に心の師匠と決めてしまいました。JJおじさんのマネをしてジャズを聴き、当時銀座にあったイエナ書店へ洋書を眺めに行きました。あの頃のわたしの夢は、JJおじさんのような生活をすることだったなぁ!
「想い出した夢は実現する」って誰かが言ってたけど、わたしが想い出した夢は実現するのでしょうか?
« 『銀齢の果て』 筒井康隆 | トップページ | カリート »
「日本の作家 あ行」カテゴリの記事
- 『バールの正しい使い方』 青本雪平 83(2023.03.25)
- 『講談えほん 曲垣平九郎 出世の石段』 神田伯山 石崎洋司 五十嵐大介 81(2023.03.23)
- 『海の見える理髪店』 荻原浩 77(2023.03.19)
- 『書く習慣』 いしかわゆき 74(2023.03.16)
コメント