『灰色のピーターパン 池袋ウエストゲートパーク Ⅵ 6』 石田衣良
灰色のピーターパン
今回の依頼人は、なんと小学生。だけど彼は秘密のビジネスをしていたんです。
野獣とリユニオン
強盗に襲われ、足が不自由になってしまった兄の仕返しをしたいという女性がマコト君の所にやってきます。
駅前無認可ガーデン
池袋で夜働く女性達の子供を預かる無認可保育園の園長から、ある依頼を受けます。
「駅前無認可ガーデン」のような保育園は、大きな繁華街だと必ずありますよね。法律上は問題があるかもしれないけど、夜働く人達にとっては絶対に必要なものなんですものね。少子化について何かしようと思うなら、こういうことだって真剣に考えなければならないハズです。でもお役所にとって、こういうものって「ないことにしておこう」っていう対象であり続けているのは何故なのでしょうか?
池袋フェニックス計画
池袋を綺麗な町にしようと警察が一斉手入れを行ったのですが、そのやり方に理不尽さを感じるマコト君です。
外国人であっても、その町で長く暮らせばその町の人なのに、彼らを差別しようとしている役所や警察の対応にマコト君は怒ります。みんな仲間なんだから、酷い目にあっているのを見過ごすことはできません。
「池袋フェニックス計画」にも、現実と理想のギャップを感じます。不法労働者を一掃しようという掛け声は、一見正しいようでいて、実は建前論なのだなと感じます。外国からやって来て、肉体労働をしたり、夜の商売をしたりしている人は沢山います。その内どの位が合法で、どの位が違法なのかは分かりませんが、違法入国をしてまで大勢の人がやって来るほど、日本には仕事があるということなんですよね。
「日本人がやりたくない仕事を外国人労働者がやってくれている」という構図は、これからどんどん広まっていくことでしょう。将来的には、低価格のサービス業で働くのは、ほとんどが外国人労働者ばかりになってしまうのではないかと思います。
それがいいことか悪いことかと考えるよりも、いかに共存していくのか?ということが先決だと思うんです。敵対するものとして考えるのではなく、同じ空間を共有するものとして、同じ地域に住む隣同士として、仲間であるという事を第一に考えることが大事だと思うのです。ねぇ、マコト君。
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» 灰色のピーター・パン 池袋ウエストゲートパークⅥ 石田衣良 文藝春秋 [おいしい本箱Diary]
池袋ウエストゲートパークのシリーズ六作目。
安定感。一言で言うと、それか(爆)マコっちゃんは、あくまで
モテなく、さりげなく、しかも事件が絡むと、かっこよく・・・。
(あ、でも今回最後にもててたなあ)
マコっちゃんのやること、なすこと全部ツボにはまってきれいに解決
しすぎやん、という感じはあります。Gボーイズのタカシ君に頼りすぎてんの
ちゃうのん、という感じもあります。皆がみんな実はいい人すぎるや~ん、という
感じもあります。でも、それもひっくるめてこのシリーズは、やはり好き...... [続きを読む]
» 灰色のピ−ターパン−池袋ウエストゲートパークVI、石田衣良 [粋な提案]
カバー・目次写真は新津保建秀。モデルはKOTAO。装幀は関口聖司。
オール讀物2004年12月号から2005年12月号まで不定期掲載の4つの連作短編を収録。通称IWGPシリーズ第6弾。
池袋西口公園前の果物屋の店番(息子... [続きを読む]
» 【灰色のピーターパン】 石田 衣良 著 [じゅずじの旦那]
図書館にオーダーし、ようやく手にした「池袋ウエストゲートパーク(IWGP) VI」。
《盗撮映像売買で恐喝されるハメになった小学生、足に障害を負った兄の敵を討つために復讐を誓うブティック販売員、幼児誘拐事件に巻きこまれた園児救出劇。トラブル続きの“ネバーランド”を描くシリーズ第6弾。》
やっぱり、面白いです!
まぁ、はっきりいって第6弾というくらいですから、マコトにもかなり無理はありますが・・・。
でもその時代時代をうまく表現していて、こうすればスッキリするのに、ということを体現させ... [続きを読む]
TBありがとうございました。
保育園の問題はねえ・・。ほんとに、その通りで。少子化対策、なんていってるけど一番大事なとこがぬけてるから・・。そんなんじゃ子どもなんて増えないですよね・・。
投稿: ERI | 2006年8月17日 (木) 23:33
ERIさん☆トラバ&コメントありがとうございます
本当にやらなければならないこと、本当に必要なもの、本当に大事なこと。
そんなことを考えてしまいました。
投稿: Roko | 2006年8月17日 (木) 23:44
Rokoさん、こんばんは。
このシリーズ、現実をリアルに描いて、いろんな問題提起をしていますよね。
実際に、マコトみたいな人物がいて活躍してくれたら、もっと住み心地のいい社会になるのでは・・・なんて考えてしまいます。
投稿: 藍色 | 2006年8月24日 (木) 01:18
藍色さん☆トラバ&コメントありがとうございます
「自分はおせっかいなんだ」なんて言いながら、色んな問題を解決していくマコト君。
こういう人がどこかにいたらいいなぁって、わたしも思っています。
投稿: Roko | 2006年8月24日 (木) 07:59
コメント、TBありがとうございました。
>いかに共存していくのか?
確かにそう思います。現実に彼らがいなければ社会が成り立たなくたっているという事実。理想論ばかりじゃ、現実にそぐわないですよね。
ついにフィリピンからの看護士受け入れを認めたそうな。今の日本じゃ地域によっては医者も足りない。嫁も足りない。どんどん地方からグローバル化してきそうな気がします。
その一方で、ニート、ワーキングプア問題。
よくわからんですねぇ・・・!?
ここは、マコト君にヒト肌もフタ肌も脱いでもらいましょうか(笑)
投稿: juzji | 2006年9月12日 (火) 08:57
juzjiさん☆ホント、よく分からない世の中です。
>どんどん地方からグローバル化してきそうな
看護士がOKとなると、他の業種も同じようになっていくんでしょうね。
こういう形でのグローバル化って、ちょっと怖いなぁ!
投稿: Roko | 2006年9月12日 (火) 23:42
4短編を並べてみると、どれもアップ・トゥ・デイトな問題ばかりを扱っていますね。解決は簡単ではないけれど、なんとか目先はしのいでいかなければならない。
そういう問題の取り上げ方が、石田さんはとても巧みです。
投稿: ディック | 2007年1月28日 (日) 20:55
ディックさん☆こんばんは
衣良さんは、タイムリーな問題を提起するのが本当に上手ですよね。
こういう作品から、色んなことをみんなが真剣に考えてくれるようになればいいなぁと思うのです。(^_^)v
投稿: Roko | 2007年1月28日 (日) 23:23