『皮膚感覚の不思議』 山口創
やって欲しいことをきめ細かにやってくれる気持ちよさを「麻姑掻痒」(まこそうよう)という。中国に麻姑という伝説上の美女がいた。彼女の爪は長く、その手で痒いところを掻いてもらうと気持がいいことに由来する。(本文より抜粋)
背中を掻く道具「まごのて」は、実は「麻姑の手」なんですって!発音が似ているから「孫の手」になってしまったそうです。痒いところを掻く快感ってのは昔も今も変わらないんですね。
「くすぐったい」という感覚には、誰に触られるのかという認識が大事なんだそうです。自分が好ましいと思っている人間にくすぐられるから「くすぐったい」という「快い」感覚が生まれるのであって、知らない人や嫌いな人にくすぐられても「嫌だなぁ」という感覚しか持てないのです。感覚と心理は密接な関係にあるんですね。
皮膚感覚には「痛い」「痒い」「熱い」「冷たい」「気持いい」などがありますが、それをどう感じるのかは民族差もあれば男女差もあるようなのです。そして個人差も当然あります。子供の頃のスキンシップの頻度もかなり影響を及ぼすようなのです。
他人に触られることに抵抗感が強い人ほど、情緒不安定の傾向があり、心身の健康度も低い。
人間は、本質的にはスキンシップが好きです。初対面の人と握手をしたり、子供の頭を撫でたり、マッサージや指圧をしてもらったり、触るということの気持ちよさを多くの人が感じています。でも、人との接触が苦手という人もいます。誰が触ったのか分からないつり革を掴めないなんて人もいます。
赤ちゃんの時にはみんな何でも掴んで、何でも口に入れてみます。子供の頃、砂場で遊ぶのはとても楽しかったじゃないですか!夏の海水浴では太陽の暑さを全身で感じ、かき氷の冷たさを楽しみました。雪が降ればその冷たさを肌で感じ、家に帰って入る熱いお風呂にホッとします。
そういう皮膚感覚が心の健康を作りだしているのだと、これまで気付かずに生きてきました。冬でも暖かく、夏でも涼しくというように、余り便利になり過ぎると、心にとっては良くない状況を作りだしてしまうのかもしれません。
日本人はずっと自然と協調して生きてきました。旬のものを食べ、季節に合わせた衣類や家具を使ってきました。そういうライフスタイルに少しでも近づくことが、心の健康のためにも大事なんでしょうね。
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