『100回泣くこと』 中村航
実家で飼っている犬が死にそうだと母親から電話がかかって来た。自分が子供の頃に拾ってきた犬。あいつと一緒に大きくなった。あいつは犬だけど2ストロークと4ストロークの違いが分かる。だからずっと乗っていなかったバイクを直して、そいつに乗って実家へ帰ろうと思う。
彼女はバイクを修理する時も手伝ってくれた。歳の差もない。彼女と結婚しようと思っている。
特別にはしゃぐわけでもなく、誰かに見せびらかすわけでもなく、淡々と、好きな人と時間を共有できるという幸せをつかんだ2人。この本の前半は、なんて爽やかな2人なんだろうという気持ちに満たされた。
だけど後半、ガラッと様相は変わる。永遠に続くと思っていた幸せは突然崩れる。
この本のタイトルからいって、何かが起こるとは思っていたけれど、後半の展開は悲しかった。淡々と事態が悪化していくところが、ジワジワと胸を締め付ける。どうにもならない運命は切なく悲しい。
自分が生きている限り、時間は止まらない。誰だって、いつも楽しい時間を過ごしていきたいと思うけれど、悲しいことや辛いことは突然やってくる。それに耐えられるだけの強さをわたしは持っているだろうか?
現在のわたしは幸いなことに特別な苦しさや悲しさは持っていない。でも、それがいつまで続くのかは分からない。分からないからといって、余計な心配をしようとは思わないけれど、いつか我が身に襲い掛かる障害に耐えていく為に、日々心を鍛えていかなければと思っている。
映画や本で悲しいストーリーに涙を流すのも、心を鍛える為の1つの方法ではないかとわたしは思っているのだが、実際にはどうなんだろう?
悲しくて泣くこと、嬉しくて泣くこと、悔しくて泣くこと、幸せで泣くこと。一生の中で一体何回泣くのだろう?それはきっと、100回どころじゃないだろうけど。涙を流すごとに心が少しずつきれいになっていくのだと、わたしは信じたい。
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100回泣くこと
中村 航
193 ★★★☆☆
【100回泣くこと】 中村 航 著 小学館
《恋愛小説、坦々と書かれているのが切ない》
出版社 / 著者からの内容紹介より
今最注目の野間文芸新人賞作家最新恋愛小説
実家で飼っていた愛犬・ブックが死にそうだ、という連絡を受けた僕は、彼女から「バイクで帰ってあげなよ」といわれる。ブックは、僕の2ストのバイクが吐き出すエンジン音が何より大好きだったのだ。4年近く乗っていなかったバイク。彼女と一緒にキャブレターを分解し、そこ... [続きを読む]
こんばんは、Rokoさん。
Rokoさんのブログを読んで、100回泣くことの意味がわかったような気がしました。
《》涙を流すごとに心が少しずつきれいになっていくのだ《》
なるほど、なるほどと感心しきりです。
投稿: モンガ | 2006年12月20日 (水) 00:49
モンガさん☆こんばんは
辛くても、悲しくても、わたしたちは生きていかなければいけないんです。
だから我慢しないで、泣きたかったら泣けばいいんです。(>_<)
わたしはいつも、そうやってきました。
投稿: Roko | 2006年12月20日 (水) 22:18