『眠れぬ真珠』 石田衣良
主人公の咲世子は45歳。銅板画家としてキャリアを築き、逗子のアトリエで仕事をしている。結婚はしていないけれど、付き合っている男はいる。最近、更年期障害で体調が不安定なことがあったりして、「わたしも歳かなぁ」と、ちょっと心細くなることがある。
そんな彼女が出会ったのが基樹、逗子のカフェで働く28歳の青年。
最初にぼくたちが出会った夜にかけていた映画を覚えていますか。
「シェルブールの雨傘」と「ダンサー・イン・ザ・ダーク」です。あれはやはり、カトリーヌ・ドヌーヴつながりでした。
そのことを指摘したのは、あのお店では咲世子さんだけでした。
思えば、あのときからぼくは咲世子さんに惹かれていたのかもしれません。(本文より抜粋)
17歳の年齢差があっても、男性の方が年上だったらそんなに悩むことはないだろうに、女性が年上だとどうしてこんなに悩まなければならないんだろう?
人を好きになるという気持ちに年齢なんか関係ないはずなのに、どうして歳をとると恋することに臆病になってしまうんだろう?
好きな人をチラッと見かけただけでドキドキしたり、ホンのひとこと言葉を交わすだけで幸せな気持ちになったりするって、若い子だけの特権じゃないのに!
そんなことを考えながらも、読み始めたら止まりませんでした。やっぱり衣良さんの文章にはグイグイ引っ張られちゃいますね。「どうして女性の気持ちをこんな風に分かるんだろう?」「いろんな女性に取材したんだろうなぁ!」なんて関心することが多かったですね。
この本を読んで「ステキ!」と思えるか、「そんなのありえない!」と思うかの差は大きいですよね。ムリだと思っていたら何も始まらないですもの。ステキな出会いができるように、いつも努力し続けていくことこそが大事だと思うのです。自分をもっと磨かないとね!
とはいえ、主人公の咲世子さんが、ちょっとカッコよ過ぎるところが気になりました。仕事の設定からいって、モデルは山本容子さんかなぁ?やっぱり男性がこういうストーリーを描くとロマンチックな設定になっちゃうですね。女性作家(桐野夏生とか)が描く同年代の女性はもっと生々しいですもの。
そういうのは衣良さんの好みじゃないかもしれないけど、もっと地味な女性が主人公の作品を書いて欲しいなぁ!それまで何の取り柄もないと思っていた主人公が、何かの才能に目覚めるという展開を書いて欲しいんです。
そうだ!IWGPのマコトのお母さんが主人公だったらいいなぁ!
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