『この庭に 黒いミンクの話』 梨木果歩
雪が積もると、どうしてあんなに景色が変わってしまうのだろう?木の緑も、土の茶色も、道路の灰色も、すべてが真っ白になってしまうと、あっという間に知らない世界になってしまう。雨だと外に出たくないなぁと思うような寒い日でも、雪だと思わず足を踏み出したくなってしまう。
雪を踏みしめる音だけが響き、後は何の音もしない。木の枝から雪が落ちる音にビックリしたり、鳥が羽ばたく音に振り向いてみたり、自分を取り囲む自然の大きさを心地よく感じるひと時。
自然を愛する梨木さんらしい、静かな物語です。不思議な女の子と黒いミンク、そしてオイル・サーディンばかり食べて暮らしている主人公が出会い、不思議なふれあいが始まります。
物語の中にタイミングよく登場するイラストが、益々静かな雰囲気を盛り上げてくれています。「雪の降る町を、思い出だけが通り過ぎてゆく♪」なんて歌を思い出してしまいました。
最後のシーンは、 「ミケルの庭」と繋がっていたんですね。
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