『ブラックデトロイト』 ドナルド・ゴインズ
この紹介文に惹かれて手に取ったこの本。実に面白かったです!この物語が描かれている時代は第二次世界大戦後すぐから1960年代なのだけれど、ストリートで生きるアフリカ系アメリカ人の生活は大して変わってないんだろうなぁと感じました。
この物語の主人公ホーサンは、その名の通り「淫売(ホー)の息子(サン)」として生まれ、学校へ通っている頃からいかさま賭博で小遣いを稼ぎ、16歳でポン引きになり、その後もありとあらゆる悪事を積み重ねていくのです。
このホーサンという男、嘘つきだし、金に執着しているし、ずる賢いし、暴力的だし、本当にどうしようもないワルなんです。自分の母親と、育ての親のビッグママのこと意外、誰の事も信じていないんだけど、どんなピンチのときでも絶対に自分に自信を持っているところが憎たらしいほど。でも、何だか憎めないヤツなんですよ。
この本の著者ドナルド・ゴインズは、ホーサンと同じような暮しをしていたのだそうです。ポン引きで薬中、この本は刑務所内で書き上げ、その後作家になったのですが、最後は銃撃されて37歳で死んだというのですから、物凄い人生です!
アメリカではかなり売れている作家なのに、日本ではこれが初翻訳だなんて!日本ではこういう世界は受け入れられ難いと思われていたからなのでしょうか?ヒップホップ・カルチャーを知りたい人だったら、付いてこられると思うけどなぁ。わたしは大好きですよ!他の作品も翻訳される事を祈ってます!
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