『コミュニケーションのための催眠誘導』 石井裕之
「何となく」が行動を左右する
光文社 (2006/05/02)
毎日の生活の中で、無意識のうちにやっていることってたくさんあります。朝起きて、ぼぉ~としながらトイレへ行き、顔を洗い、歯を磨いて、新聞を取りに行って、こうしようと思わなくっても、自動的にやれてしまいます。
通勤だって同じです。家から駅まで、どの道を歩こうかなんて一々考えませんよね。いつもの道を歩いて、いつもの電車のいつもの車両に乗って、いつもの駅で降りて。乗換えするには何両目に乗ればいいとか、何番目の改札を通るとか、「何となく」決まっているものです。
あのラーメン屋へ行ったら、いつも味噌ラーメンを頼んでしまうとか、ガソリンスタンドで給油する時にはいつも「満タンね!」と言ってしまうとか、お風呂に入るときは右足から入るとか、何となく決まっていることって本当にたくさんあります。
だから、この「何となく」というのが曲者なんですよ。
羽毛布団の悪徳商法で有名になった「イエスセット」は、この「何となく」をうまく利用しています。最初は簡単なもので「YES」という答えを言わせます。「この密閉容器が欲しい人は手を挙げて!」「ハイ!」って感じです。「じゃぁ、このクッキーが欲しい人は?」「ハイ!」「こんなのもあるよ!」「ハイ!」・・・・・・「羽毛布団が欲しい人!」「ハイ!」って訳です。
わざと「NO」を言わせる「ノーセット」というのもあります。
「映画館へ行っても混むだけだから、レンタルビデオのほうがいいよね!」
「わたしは大きな画面で見る方が迫力があって好きだわ。」
「でも、君はアクションものなんて好きじゃないだろう?」
「そんなことないわよ、スピード感のある映画も好きよ。」
「そうなんだぁ、最近の映画ではAよりBの方が絶対に面白そうだよね。」
「そうかしら、わたしはAの方を見たいけどなぁ!」
「じゃぁ、Aを見に行こうよ!」
ううむ、こうやって誘導されたら、誘導されたとは気付きませんよね。まるで自分で言い出したみたいじゃないですか!
自分の行動は、自分の頭で考えてやっているのだという考えは、単なる思い込みに過ぎないんですね。(^_^;)かなりの部分が、こうやって誘導されてしまっているんだろうなぁ?そして、要らないものを買い込んだり、根拠もないのにそれが常識だと思い込んでしまったりしてるんだろうなぁ?
「何となく」やってしまっている普段の行動を、もう一度見直してみなくっちゃね!
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