『ワーキングプア』 門倉貴司
日本でワーキングプアといった場合、年収200万円を切るレベルのことを言っているのだが、これは生活保護を受けられるレベルと等しい。この収入水準の人が現在日本には550万人いる。この中には主婦や60歳以上の人達もかなり含まれるが、働き盛りの30~40代男性の比率が増えているところにその恐ろしさがある。
日本の労働者は大きく2つに分かれる。正社員と非正社員、文字にしてしまえば1文字違いだけれど、現実には大きな隔たりがある。標準的な賃金で比較すれば、非正社員は正社員の五分の一しか稼げない。それに伴って、貯蓄額も少ないし、年金だって少なくなる。
派遣社員、契約社員、嘱託社員、パートタイマー、アルバイト、外食産業やコンビニなどは、こういった非正社員なしには存在し得ない。学校を卒業後に就職できなかったから、前の会社を退社後再就職できなかったから、というようなキッカケで、一旦非正社員になってしまうと、正社員になることはなかなか難しい。
「慢性的人手不足」である正社員は長時間労働を強いられる。身体や精神がキツくなって辞める人は後を絶たない。そういう生活は嫌だという理由で非正社員でいる人も実はたくさんいる。「自由な時間が欲しいから」、「何かやりたいことがあるから」という積極的な理由での非正社員なら、収入の少なさはさほど気にならないだろう。
とはいっても、パラサイト・シングルのように家賃や光熱費をを払わずに済むのでなかったら、年収200万円での生活はかなり苦しい。家族の誰かが病気や怪我で入院するような事態になったら、生活はあっという間に破綻してしまう。
人件費を低く抑えたいという傾向はこれからも広がっていくのは確実です。かつては国内の工場で生産していたものの、殆どが外国の工場で生産されるようになっています。看護師のように、これまでは外国人労働者には門戸を開けていなかった業種にも大勢の労働者がやってきます。
そんな世の中で、ある程度の生活レベルを保ちたいと思ったら、頭を使うしかないはずです。
普通の人達は 「収入を今より増やすにはどうしたらいいのか?」 と考えます。
長時間働くのか?単価の高い仕事とは?副業する?投資はどう?なんてね。でもね、これからは違うんじゃないかと思うんです。
「お金を使わずに楽しく暮らすには?」 ってことを、もっともっと考えてみるべきだと思うんです。わたしたちは「お金持ち = 幸福」という考え方に囚われすぎなんじゃないかなぁ?
斎藤一人さんの本にこんな事が書かれていました。「日本人は楽しみが足りないから、買い物がレジャーになってしまう。」 ストレス食いも、やけ酒も、ストレス解消の買物も、気分転換するにもお金がかかってしまうのです。
ストレス解消になら、散歩でも、草野球でもいいはずです。美味しいものを食べたいなら、自分で料理をすればいいんです。お金を使わなければ何もできない自分であることに気が付き、徹底的に考え直してみれば、違う楽しみが、違う自分が見えてくるんじゃないかと思います。
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