『インテリジェンス 武器なき戦争』 手嶋龍一 佐藤優
インテリジェンス(情報)は、国家の命運を担う政治指導者が舵を定めるための羅針盤である(本文より抜粋)
情報活動というのは、わたしたちの日常生活からは見えないところで行われているけれど、これがキチンと出来ているかどうかで国家の安全や評価が左右される。では、我が国のインテリジェンスはどうなっているのでしょう?
この本の著者のお2人は、これまでの日本外交のインテリジェンス活動はまぁまぁだとおっしゃってますけど、実際の所はどうなんでしょうか?
この本を読んでみて感じたのは、色々な情報を分析して判断をするというのは当前ですが、それ以前の問題もかなりあるんだなぁということです。
現在、サウジアラビア王国がある領域は、もともとハッシム家が支配していましたが、途中からサウード家が入ってきて支配するようになりました。サウード家というのは、イスラムの三大聖地のうち、エルサレムを除くメッカとメディなの二ヶ所を守る立場にあります。ところが、そこにアメリカ軍が駐留している。しかし、そこには経典に依拠した理由があります。コーランに従えば、傭兵としてキリスト教徒とユダヤ教とは使うことが出来るんです。
こういうことって「情報」じゃなくて「知識」ですよね。きちんと勉強したり、詳しい人に教わったりすれば分かることです。日本は基本的には仏教国ですから、この地域に自衛隊を派遣することはマズイんじゃないかと考えることは必要だったはずです。
イラク戦争の時に、「サダム・フセインとアルカイダはつながっている」という理論でアメリカは日本に協力を要請してきました。でも現在は「アルカイダとイラクは関係ない」とCIAもブッシュ政権も認めてしまっています。
協力を依頼された時点で、アメリカの言い分が本当かどうか判断できていなかったということだし、事実関係が逆転してしまった今、アメリカに「あれは間違いだったじゃないか」と突っ込むワケでもなし、こんな判断しかできない日本政府ってなんだかなぁ?
数年前にかなり話題になった旧カウナス領事館領事代理だった杉原千畝の「命のビザ」というのを覚えていますか。その杉原千畝の名誉回復運動にも、インテリジェンス活動の匂いがするのだそうです。ということは、インテリジェンスとは何であるかを分かっている人もいるのだと、ホッとするけれど、でもそんな人が他に何人いるのだろう?と考えてしまいます。
国家単位であっても、個人単位であっても、インテリジェンスというのは実に重要なものです。ある事項に対してどれだけの知識があるのか?どれだけの情報を持っているのか?どれだけの人脈を持っているのか?ただ頑張ればいいなんて思っていたら、何もできないってことを感じるのです。
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幻冬舎新書012、手嶋龍一、佐藤優 ※ 元NHKワシントン特派員の手嶋龍一氏と、 外務省のラスプチーンの異名を持ち、背任事件で起訴され、 現在休職中の佐藤優氏との 国際政治をめぐる情報(インテリジェンス)についての対談。 強烈な個性を持つ2人で、 本の内容がどこまで本当なんだか、 誇張なんだか判然としないが、 国際情勢にあまり詳しくなくても面白く読めた。 プロのインテリジェント・オフィサーに関する両氏の意見。 手嶋氏は「本当のプロは、事が起こってから『実は事前に知っていた』... [続きを読む]
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