『海の仙人』 絲山秋子
「俺様はそんな都合のいい神ではないぞ。奇跡だってあまり上手くない。せいぜいが、孤独な者と語り合うくらいだ。トキとか、その前はニホンオオカミだったな」 「おれも絶滅系か」 「俺様のことはやじ馬だと思ってくれたまえ。よくいるだろう、新橋の焼鳥屋とかモンマルトルのカフェとかブダペストの下町なんかに」(本文より)
河野クンの目の前に突然現れたのは40歳くらいのおっさん。初めて見る顔なのに、何故かその存在を知っていて、思わず名前を呼んでしまったのです。「ファンタジーか」
このファンタジーさんは神様らしい(?)んですが、言うことも、やることも、軽くてテキトー!こういう神様なら一度会ってみたいなぁ!
河野クンとファンタジーの初めてのドライブで、ラジオから流れてきた曲にはビックリしましたよ。シド・バレットの「ジゴロおばさん Gigolo Aunt」じゃありませんか!海辺で、変な神様と一緒に聞くのがこの曲って、「なんというセンスだ!」ですよ。
ペリカン・カフェというサイトの絲山さんのインタビュー記事に音楽との関わりについて話が出てきました。この記事で知ったのですが、絲山さんは住宅機器メーカーの営業として、名古屋や福岡などで勤務されていたそうです。この物語に登場するかりんさんのモデルって、絲山さんご本人だったんですね。
クルマ好きの絲山さんですから、この本にも個性的な車が沢山登場します。河野クンの車はダットサン・ピックアップ。かりんさんはジープ。片桐さんはアルファロメオのGTV。澤田クンは灰色のカローラバン。個性的な外車か実用的な営業車しか車と認めていないような所がいかにも絲山さんだなぁって思います。
「アルファったら赤いに決まってんだよ」 と言う片桐さん。子供の頃読書魔で「一番好きなのはドリトル先生」 と言うかりんさん。やっぱり絲山さんが描く女性はいい感じだなぁ!
現在停止中の敦賀原発の近くに河野クンは住んでいるのですが、日本海の海岸ってわたしが知っている太平洋の海岸とは大夫様子が違うみたいですね。一度行ってみたいなぁ。絲山さんの作品を読むと旅に出たくなることが多いのは何故でしょうか?
図書館で何気なく手に取った本だったのですが、夏に読むのにとってもピッタリな本でした。
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