『博士の本棚』 小川洋子
- 小川 洋子
- 新潮社
- 1575円
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livedoor BOOKS
書評/国内純文学
同じお母さんから産まれた兄弟でも性格が異なるのと同じで、小説も一冊一冊、背負っている運が違う。暗い小説だから暗い運、明るい小説だから明るい運、というわけではなく、内容とは全く無関係のレベルで、また作者の意図とはかけ離れたところで、本はそれ自体で自分の運命を生きる。(本文より抜粋)
小川さんにとって「博士の愛した数式」は「やんちゃな末っ子」というイメージなのだそうです。「何をしでかすか予測不能だけど、愛おしい我が子」という気持が込められているんでしょうね。
ご自分が書かれた小説が外国語に翻訳されていくことの不思議さ。自分が読んだ本に影響されて書かれたご自身の作品のこと。阪神ファンであること。アンネ・フランクに対する深い思い。故郷の町並みの思い出。学生時代の恩賜の言葉。愛犬ラブへの思いやり。
そういう、様々なものが小川さんを作り上げているのだなと感じました。1人の人間は実に様々なものからできているのです。自分が意識しているものはモチロン、忘れてしまっているものからも。「あっ、こんな事もあったんだ!」と気付くとき、それは大事な宝物になるのですね。
読書が好きで、図書館に入り浸っていたという学生時代のお話は、わたしにとっても懐かしい感覚が甦ってきます。ヒマがあれば図書館へ行き、学校の帰りには必ず本屋さんへ寄る。そうやって、幸せな気持を自分の中に貯めていたのだなぁと思えてきました。
小川さんがお薦めの本が何冊も紹介されていました。村上春樹がお好きなんですね。「中国行きのスロウボート」を読んでみようかな。
そして内田百閒先生の「サラサーテの盤」。これは映画「ツィゴイネルワイゼン」の原作としてパンフレットに書かれていて、封切りの後に読んだような気もするんだけど、これもまた読んでみましょう。
そして最後に、小川さんの美しい文章を読んだ後だと、わたしの文章まできれいになってくるような気がします。美しい気持が、美しい気持を呼ぶ連鎖なのかな?
この本は 書評サイト 「本が好き!」 より提供して頂きました。どうもありがとうございました。
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装画は戸田ノブコ。装幀は新潮社装幀室。
目次:1図書室の本棚―子供の本と外国文学/2博士の本棚―数式と数学の魅力/3ちょっと散歩へ―犬と野球と古い家/4書斎の本棚―物語と小説
大好きな本の数々を紹介しながら、日常生活の中... [続きを読む]
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こんばんは。
ご無沙汰してました~。
小川さんの日常、作り上げていることがわかって
とっても興味深かったです。
お薦めの本、読めそうになくて落胆してましたけど、
「サラサーテの盤」って映画「ツィゴイネルワイゼン」(見ました!)の原作だったんですね。
映画で勘弁ってわけには…(笑)。
トラバさせていただきました。
もしトラバ届かないようでしたら、先にしてくださいますか?。
9月24日の「夜明けの縁をさ迷う人々」からリンクしています。
投稿: 藍色 | 2007年9月28日 (金) 04:22
藍色さん☆こんばんは
「ツィゴイネルワイゼン」を観たならOKでしょう。(#^.^#)
阪神と愛犬と可愛い息子さん、そして愛する本。
小川さんを作り上げている様々なもの、すべてがステキでしたね。
投稿: Roko | 2007年9月28日 (金) 23:12
少し興味は惹かれるけれど、この本を読むのはずっとあとかな…、などと思っていましたが、こうやって Rokoさんの感想を読んでしまうと、刺激されて順番が繰り上がってきますね。
小川洋子さんは、ぼくにとって、いまひとつ謎の多い(わかっているようでいてわかっていない)作家さんです。
投稿: ディック | 2007年9月29日 (土) 20:43
ディックさん☆順番が繰り上がりましたか?
小川さんの普段の姿が垣間見られて興味深いエッセイでしたよ。
是非、読んでみて下さいね。(^^)v
投稿: Roko | 2007年9月29日 (土) 22:26
TBさせていただきました。
どれもすばらしいエッセイばかりでしたが、中でも犬のエッセイが読んでいて、心地よくなってきてすばらしかったです。
投稿: タウム | 2007年11月19日 (月) 23:16
タウムさん☆こんばんは
小川さんも筋金入りの読書好きでしたね。
本に対しては硬派な小川さんだけど、愛犬とのやりとりはホノボノしていて、「ああ、こういう優しさっていいなぁ」なんて思いました。
投稿: Roko | 2007年11月19日 (月) 23:59