『アマチュアスポーツも金次第』 生島淳
スポーツにおけるアマチュアリズム論というのは未だに根強い。お金が絡むプロよりも、アマチュアの方がスポーツらしくて好きだという人もいる。でも本当にそうなんだろうか?
スポーツってお金がかかるんですよね。自分が楽しむというレベルなら大したことないですけど、ある程度うまくなってくると様々な費用が必要になります。大会に出場する、どこかへ遠征する、道具を買う、コーチを雇う、練習場所を確保する、とにかくお金がかかります。
学校を卒業した後も選手としてスポーツを続けるには「実業団」というシステムが日本にはあります。実質的にはスポーツしかしていなくても、社員としての部活動の延長線上のような立場です。かつてはこのスタイルが日本のスポーツを支えてきました。
でも、景気が悪くなってしまえば「実業団」は存続できません。たくぎん破綻以降、ジャンプやアイスホッケーなどのウィンタースポーツ界はすっかり縮小してしまいました。北海道でもお金や手間のかかるウィンタースポーツよりも、より手軽な野球やサッカーへシフトしてしまっているというのです。
来年は北京オリンピックです。これまではオリンピック常連だった競技でも、今回はかなり苦戦を強いられています。参加すらできないレベルになってしまっている競技だってあるのです。
でも出場できないのは、選手だけのせいではないのです。お金がなければありとあらゆることができなくなってしまうのです。
この本の中で書かれていた、中国のスポーツビジネスに関する内容で気になったことをちょっと書こうと思います。
2004年にNBAが中国で試合をするために施設を見学したところ、北京にある施設は照明の光度が不足し、シャワールームもお粗末で、とてもNBAの選手が使うようなレベルではなかったのです。そこでNBAは中国側に改善要求を出したのです。
それに対する中国側の返答は、「どうしてもここで試合がしたいのなら、あなたがたが修繕してはいかがでしょうか?」結局NBAが修理代を出したのだそうです。
同じ事を日本が言われたとしたら「すいません、すぐ直します」って、きっと言っちゃいますよね。中国って実にしたたかなんだなと感心してしまいました。
ところで、来年の北京オリンピックの施設は間に合うんでしょうかね?
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