『モノづくり幻想が日本経済をダメにする - 変わる世界、変わらない日本』 野口悠紀雄
IBMがノートパソコンの生産を中国レノボ社に売却したとき、日本IBMのある幹部は、次のように説明してくれた。「コモディティになった製品を作るのはやめた」(本文より)
コモディティ(commodity)とは、生産に格別特殊な技術が必要とされないため、差別化特性がなく、価格が主たる判断基準になる製品という意味なのだそうです。
誰でも作れるような製品だと最終的には安値合戦になってしまって、労力の割に利益が少なくなってしまいます。そういう仕事をしていても、将来性がないからやめてしまおうという判断をIBMはしたということなんです。
わたしが小学校の社会の時間に習った日本の産業は、造船や鉄鋼などの「重厚長大」でした。その後、自動車やエレクトロニクスなどの産業が中心となり、今はITだと言われてるのですが、やっぱり日本はモノを作るのが好きな国なんですよね。
カイゼンとか、TQCとか、品質を向上させる技術はとても素晴らしいものがあります。それにかつては「スーパーカブ」とか「トランジスタラジオ」など、日本でしか作れない優秀な製品を生み出していました。
ホンの数年前まで、持ち歩くオーディオといえば世界中どこへいってもウォークマンでした。それが今ではすっかり ipod になってしまいました。似たようなものを他のメーカーも作ってますけど、やっぱり ipod が一番売れてます。
最近の日本って技術ばかり考えていて、ユニークな製品を生み出す力がなくなってしまったような気がします。技術的にとか、耐久力がとかよりも、デザインやセンスが優れていることの方が大事なことの方が多いのに~!って思うことがよくあります。
たとえばルイ・ヴィトンのバッグのことを考えてみてください。塩化ビニール素材にLVというマークがプリントされているだけのバッグです。なのに牛皮のバッグより高いんですよ!これこそが付加価値(デザインやセンス)の勝利ってことじゃないですか!
誰にでも作れるものを作っていたんじゃ、いつかはジリ貧になっちゃいます。他にないユニークなものを作るのでなければ生き残っていけないんですね。
日本がGNP世界2位になったのは、かなり前のお話です。いまだにその数字のままだと思っている人っていませんか?
いろんな意味で日本は弱体化しているのに、それに気付かないままでいるのってとても危険なことだと思います。これからの時代をどう生き抜いていくのか、一人一人が真剣に考えないとまずい時期に来ているんですよ!みなさん!
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