『床下仙人』 原宏一
床下仙人
新興住宅地にある我が家の床下に、仙人のような男がいるらしいのです。
てんぷら社員
一週間前に地方の支社から本社へ転勤してきた田所さん。平社員のはずなのに、なぜか上司がみんな彼の言うことを聞いてしまうのです。
戦争管理組合
一か月振りに我が家のあるマンションの玄関ホールに入った直後、女に銃を突き付けられた。
派遣社長
今度わが社に「お試し社長キャンペーン」で、派遣社長がやって来ることになった。
シューシャイン・ギャング
渋谷駅前で信号待ちしていたら、いきなり靴を磨かれた。
家庭を顧みずに働きすぎて、家族から見放されてしまったお父さん。社内恋愛禁止の会社で、それがバレそうになってあせっている男性社員。一生懸命に働いているつもりだったのにリストラされてしまったお父さん。この本に収められている5つのストーリーに共通しているのは、働きすぎのサラリーマンです。
一番気に入ったのは「派遣社長」です。普通派遣といったら平社員のレベルですよね。この話の中では、中小企業に社長を派遣してしまうんです。親会社から子会社の社長がやって来るなんてのは実際によくある話だけど、それだって3年とか5年という長さです。この話のように社長を短期間派遣してもらうなんて!これは案外凄いアイデアなのかも?なんて思ってしまいました。
それにしても、日本のサラリーマンは働き過ぎですよね。家族の為という大義で働いていながら、家に帰っても子供の寝顔しか見られないなんて、本末転倒な気がします。
家族全員が揃って夕御飯を食べられる家庭って、今の日本ではどのくらいいるのでしょうか?わたしが子供の頃は、それが当たり前だったんですけどねぇ。いつごろからお父さん抜きの夕御飯が当たり前になっちゃったんでしょう?
836冊目(今年19冊目)
« 『なぜ勉強するのか?』 鈴木光司 | トップページ | 『筋肉バカの壁 [博士の異常な健康PART2]』 水道橋博士 »
「日本の作家 は行」カテゴリの記事
- 『きまぐれロボット』 星新一 24-243-3269(2024.08.25)
- 『ChatGPT vs.未来のない仕事をする人たち』 堀江貴文 24-233-3259(2024.08.16)
- 『昭和ぐらしで令和を生きる』 平山雄 24-230-3256(2024.08.13)
- 『レシート探訪』 藤沢あかり 24-226-3252(2024.08.09)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 『床下仙人』 原宏一:
» 床下仙人 / 原宏一 [読書発電所Annex]
この本はRokoさんのところで見かけた本ですが、ちょっと興味が湧いて、図書館で借りてきました。 家庭の為に家庭を顧みず働くといった矛盾した状態の主人公が哀れな末路をたどる「床下仙人」、男性中心の世の中に戦いを挑んだ「戦争管理組合」の女性達、全部で五つの短篇が収められていますが、どの話もなんだか悲...... [続きを読む]
« 『なぜ勉強するのか?』 鈴木光司 | トップページ | 『筋肉バカの壁 [博士の異常な健康PART2]』 水道橋博士 »
ホラ話をいかにもありそうに描いて読ませてくれる。貴重な作家さんです。
いま『天下り酒場』を読んでいますが、こちらもとてもおもしろいです。
投稿: ディック | 2008年2月19日 (火) 15:43
ディックさん☆こんばんは
面白そうなタイトルなので読んでみたんですが、人を食った感じで面白いですね。
「てんぷら社員」とか「派遣社長」とか本当にいそうな気がします。
「天下り酒場」ってタイトルもいい感じですね、読んでみようかなぁ!
投稿: Roko | 2008年2月19日 (火) 22:25
『天間下り酒場』もおもしろいですよ。
まあ、次から次へと、よくこういう話を思いつくものだと感心します。
投稿: ディック | 2008年2月20日 (水) 22:41
ディックさん☆
おススメありがとうございます。
読んでみま~す!
投稿: Roko | 2008年2月21日 (木) 00:08
こんばんは。
近所の本屋お薦め本だったのですが
面白くて、読んでよかった。
「天下り酒場」私も読んでみよう!
「派遣社長」働いてるのがみんな派遣で、その会社を持っているのも派遣会社…そんな奇妙な現象が面白かったです。
投稿: なな | 2008年6月 1日 (日) 21:34
ななさん☆こんばんは
会社で必死に働いて、家に帰ってみたら床下仙人がいるなんて、良く考えてみたら怖い話ですよね。
でも床下仙人に話を聞いて欲しくなってしまう奥さんの気持ちってのも分かるからなぁ!
家族との絆って何なんだろうって考えちゃいました。
投稿: Roko | 2008年6月 1日 (日) 22:57
どの物語も着想が奇抜で面白かったです。
『床下仙人』は、めぐりめぐっているのが恐ろしくもあり、可笑しくもありますね。
どれも、あり得ないと一笑に付してしまえないのが現代人の哀しさでしょうか。
投稿: ふらっと | 2008年10月 6日 (月) 06:44
ふらっとさん☆おはようございます
「こんなことが起きるわけない」とは、到底言えそうにない所がとっても怖いですね。
知らないのは自分だけってこと、ありそうだなぁ。
投稿: Roko | 2008年10月 6日 (月) 07:59