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『目覚めよと彼の呼ぶ声がする』 石田衣良

目覚めよと彼の呼ぶ声がする
石田 衣良
文藝春秋

 ぼくたちは仕事をして金を稼ぐこととその金を消費すること以外、どんどん苦手になっているのだ。恋愛をふくむ広い意味での人と人との関係性をつくることが、ひどく困難な時代なのである。(本文より)

 この頃、衣良さんの小説に食傷気味で、どこへ行っちゃうの?という気持ちになってました。でも、このエッセイ集は衣良さんの自然な感じがよく出てて好きだなぁって思いました。

 衣良さんの文章の良さって、その柔らかさにあると思うんです。肩の力が抜けたというか、お洒落なセリフやカッコよさじゃなくて、「ぼくはこんな風なんですけど、あなたはどういうのが好きですか?」というような問いかける雰囲気が、わたしは大好きなんです。

 それとね、生まれた地域が近いからなのかもしれませんけど、人との関わり合い方が同じノリという気がするんです。「困っている人がいたら助けなきゃ!」「友達っていいもんだよね」 そんな気持ちが伝わってくる時、とても嬉しくなってしまうんです。

 それで実際に仕事をしてみてどうだったか大間違いだったのだ。世の中も、仕事も想像しているより、ずっとおもしろかった。第一仕事さえちゃんとやっていれば、学生よりも社会人の方がずっとずっと自由だったのだ。生活もお金も自由になる。誰かにああしなさい、こうしなさいなどとまったくいわれなくなるのだ。

 こういう感覚って分かるなぁ!わたしも社会に出てからの方がずっとノビノビできるようになりました。自分で稼いだお金だから、それをどう使おうと自分の自由!仕事さえちゃんとやってれば、あとの時間は何をしていようと自由!就職して、とても解放された気持ちになったことを覚えています。

 働くのが嫌だなんて思ったことはないし、かといって寝る暇もないほど働いたこともありません。働くのは生活を維持するため、そして自分の生活を潤いのあるものにするためですから。遊ぶ暇もないほど働くなんて、考えたこともありません。

 池波正太郎は「大人の男が遊ばない国の文化は駄目になる」と書いた。

 そうですよね。「仕事が忙しくて遊ぶ暇がない」なんて、あっちゃいけないことです。「遊ぶために働いている」というスタンスこそが、正しい大人の在り方ですよね。

 どんなに仕事が忙しくても、いつも楽しいことを考えている衣良さん、あなたは立派な大人ですね!あなたのような人が増えたら、日本はもっと良い国になれるんだけどなぁ!

854冊目(今年37冊目)☆☆☆☆☆

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苗坊の読書日記

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日本の作家 あ行」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。TBさせていただきました。
最近石田作品はご無沙汰だったのですが、この作品を読んで、また読んでみようかなと思いました。
女性に対する思いや、仕事の事。
石田さんの思っていることに納得する部分は多かったです。
自分を見直さなきゃ!とも感じさせてくれました。

苗坊さん☆TBありがとうございます
「デパートの男性トイレにベビーベッドがあった」とビックリしているあたりに、衣良さんの優しさが出てるなぁって思いました。

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目覚めよと彼の呼ぶ声がする 人気絶頂作家が恋愛を、趣味を、そして人生を語る。 いま、最も活き活きと現代を描く作家が恋愛を語り、スポーツや音楽を楽しみ、憲法論議にも独特の視点で切り込む刺激的エッセイ集。 久しぶりに石田さんの作品を読みました。 エッセイで....... [続きを読む]

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