latitude/緯度:II 下滝英男写真プリント作品展
わたしの友人、下滝さんの写真展を見に行ってきました。会場に展示されている写真のオリジナルは、30年ほど前に下滝さんがアメリカで撮ってきたアナログの写真です。
元はカラーだった写真をモノクロにしてみたり、ネガが見つからなくなってしまった小さな写真をスキャナーで読み込んで拡大してみたり、現代のデジタル技術のおかげで、いろんなことができるんですね。そうしているうちに、思いがけないものが出てきたのだそうです。
この写真は、オリジナルを裏返してみたのだそうです。橋の形はほぼ左右対称なのだけれど、歩いている人の向きが変わったことによって、まったくイメージが変わってしまって、こちらの方がいいなぁという結論になったのだとか。
写真というのは、事実をそのまま切り取るものだと思っていたけれど、それだけではないんですね。
下滝さんは、こんなこともおっしゃっていました。
絵というのは、紙やキャンバスの上に色を重ねていくという、足し算によって絵を作り上がって行くけれど、写真は逆なんだよ。何枚も写真を撮って、あれはダメ、これはダメと捨てていき、引き算をして選んでいくものなんだ。
そして、もう1つ、
デジタルカメラは便利だけど、すべてが写りすぎちゃうんだなぁ。人間の目って、何かに焦点を合わせると、他の部分はボケたり、見えなくなったりするでしょう。アナログカメラだと、そういう写真が撮れるんだよね。でも、デジタルだとすべてに焦点が合っちゃうんだよ。だから、どこを見ていいんだか分からなくなってしまうんだ。
デジタルな世界では、すべてが平等なんですよね。手前にあるものも、奥の方にあるものも、すべてに焦点が合ってしまうのです。でも、人間の感性では、そんなことはあり得ません。何かに注目している時、それ以外のものは無くなって欲しいんです。あくまでも背景でいて欲しいのに、出しゃばるな!という気持ちになってしまうんですね。
最近の世の中って、そんな感じなのかな?と思うんです。
すべてのものを欲しがってしまうから、どれも手に入れられないんじゃないかな?まずは1点に気持ちを集中して、それを手に入れるのだと。それまでは余計なものに気を取られてはいけないのだと。
とても大事なことに気がつくきっかけを作ってくれた下滝さんに感謝です。
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