美の巨人たち 甲斐庄楠音 「横櫛」
甲斐庄楠音(かいのしょうただおと)の「横櫛」というこの絵、どこかで見たことがありませんか?
6月28日放映 美の巨人たち
岩井志麻子さんの「ぼっけえ、きょうてえ」という本の表紙になっているこの絵も「横櫛」なのです。
同じ構図だけど全く違う絵です。でも、実は同じ絵なんです。
この怖い絵の方がオリジナルで、その後いろいろな事情があって、上のような美人画に作者自身が書き換えてしまったのだそうです。
この絵の作者、甲斐庄楠音はかなり変わった方だったそうです。女装趣味があったり、ホモセクシャルだという噂があったり、描く作品もグロテスクなものが多く、「きたない絵」であるという理由で展覧会への出品を拒否されたこともあるのだそうです。
それまでの日本画の世界では、絵とはきれいなもの、美しいものというのが常識だったのですから、彼の絵に対する評価は厳しかったのだと思います。
この番組に、怖い絵の大家である梅図かずお先生が登場して、「彼の絵には、現代のホラー漫画に通じるセンスを感じる」「このきたなさが彼の個性なんだと思うなぁ」とおっしゃってました。
この絵の題名である「横櫛」とは、歌舞伎世話物の『与話情浮名横櫛』(よわなさけうきなのよこぐし)から取ったもの。別名『源氏店切られ与三』(げんじだな きられよさ)、『お富与三郎』という方が有名かな。「死んだはずだよお富さん♪」という春日八郎の歌もありましたね。
絵画の世界では色々と問題を起こした甲斐庄楠音ですが、その後、映画界での活躍をすることになります。時代劇映画の風俗や衣装の時代考証や、衣装デザインなどをしていたんです!
市川歌右衛門の旗本退屈男のあの絢爛豪華な衣裳が甲斐庄楠音によるものだったとは!
昔から、早乙女主水之介って、どうしてあんなに派手な着物を着てるんだろうって思ってたんだけど、その秘密が分かって何だかうれしいです。
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あ。
一発で「ぼっけえきょうてえ」だと分かった( ̄∇ ̄;)
ちなみに、その本読んだことないけど・・・★
投稿: つたまる | 2008年6月30日 (月) 02:19
つたまるさん☆当たり~!
この絵も怖いけど、絵を描いた甲斐庄楠音が残した写真が怖いのよ~。
投稿: Roko | 2008年6月30日 (月) 21:18