『JOY!』
「プリンセス・プリンセス」嶽本野ばら
人気バンドの「追っかけ」をするようになった女の子の話から始まるのですが、これがいかにも「嶽本野ばら」という世界観でした。着るものに異常に気を使い、けれど人間関係にはひどく無頓着。もの凄くJOYのことを好きなんだけど、一定の距離をおいて見ている姿は、野ばら的乙女の世界です!
「楽園」角田光代
女の怖さ爆発ですね。何が何でもJOYを自分のものにするんだ!という熱意は、もはや「愛」ではなくて「欲」でしかありません。こういう女に追っかけられたら、逃げ道はないですね。角田さんの描くしつこい女は怖いなぁ。
「17歳」唯野未歩子
ママは芸能プロダクションの仕事をしている。バリバリ働いていて、すっかり女を捨てちゃっている。わたしの願いは、ママが少しでいいから女性らしくなってくれること。
「All about you」井上荒野
会社の上司と不倫していたわたしは、ふとしたきっかけで「ガーゼ・スキン・ノイローゼ」のライブ会場に紛れ込んでしまって、熱狂的なファンになってしまった。
「テンペスト」江國香織
会社に最近入ってきた縄田さんは、痩せていて、へなへなしていて、変な人で、会社の中で完全に浮いています。わたしも女性社員の中で浮いています。浮いた者同士、ちょっと仲良くなりました。
「追っかけ」仲間の女性たちが、表面上は仲良くしていても、みんな腹の中は自分のことしか考えてないってことを、いずれの作者も見事に描いてますね。
ぬけがけ、悪口、悪意ある噂話、実力行使、居座り、泣き落し、ハッタリ、女って腹黒い動物ですからね。他人事として見れば「こういう女ってイヤ~!」って思うけど、いざ自分がその立場に立ったら、思いっきりやっちゃうんだよね、きっと!
5人の作家が相談して書いたのではなく、前の人が書いた物を読んで次の人が想像をふくらませて書くというリレー方式で書いたんだろうなって気がします。
それにしても、同じ一人の人間を扱ってもこんなに違うアプローチになるって所が面白いですよね。
904冊目(今年87冊目))☆☆☆☆☆☆(絶対オススメ!)
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JOY!
バンク・グループ、ガーゼ・スキン・ノイローゼのヴォーカルJOYの魅力の虜になった女たちの物語だ。
高校の授業料を稼ぐためにピンク・サロンで働いていた私(まりん)は、客の一人から高円寺のライヴ・ハウスBCBGにこないか、と誘われた。それがガーゼ・....... [続きを読む]
追っかけ仲間の女たち・・。どきっ。
過去にちょっとそんな方たちとトラブルがありました。
ライブって魔力がありますよね。
1回行くと、別なところではどんな感じなんだろう?ときになって、全国または全世界(?!)をまたにかけることになったりします。
ま、ほどほどに・・。
投稿: ゆみりんこ | 2008年7月18日 (金) 19:19
ゆみりんこさん☆「どきっ」ですか?
何処までも追っかけるということ自体は構わないけど、足の引っ張り合いみたいのは嫌だなぁ!
学校でも、会社でも、女が大勢集まると絶対に怖い人が出てくるのよねぇ!
投稿: Roko | 2008年7月19日 (土) 00:19
ああっと、「なんかおもしろそうだな」と惹かれてしまいました。
きっと、買ってしまいそう…。
投稿: ディック | 2008年7月20日 (日) 19:58
ディックさん☆惹かれちゃいましたか?
カッコいい男がいて、それを取り巻く女の子達がいてっていう、これぞロックな世界でした。
それにしても、日本の追っかけと、海外のグルーピーの基本的スタンスがぜんぜん違うのって、国民性なんでしょうかねぇ?
投稿: Roko | 2008年7月20日 (日) 21:39
とりあえず、図書館へ予約しました。
>日本の追っかけと、海外のグルーピーの基本的スタンスがぜんぜん違う…
さあて、いまのところ、そうなんですか、としか、申し上げようがなく…
投稿: ディック | 2008年7月23日 (水) 22:21
ディックさん☆予約しちゃいましたか!
読んだら是非感想を聞かせてくださいね。
楽しみにしてまーす。(*^^)v
投稿: Roko | 2008年7月24日 (木) 08:04
バラエティに富んだ楽しみ方ができて、何やらお得な読書でした。井上荒野さんて、最近のあれは、直木賞でしたっけ。今回のこれが初体験でした。
投稿: ディック | 2008年8月11日 (月) 22:16
ディックさん☆読んじゃいましたね!
あるテーマでの短編集というのはよくあるけれど、こういう連作集というのは面白いアイデアですよね!
どうやってこの本を作ったか?というドキュメントがあったら読んでみたいです。(^o^)/
投稿: Roko | 2008年8月12日 (火) 08:03
とても面白い試みでした。
次の作家さんがどんな風に繋げていくのかも興味深かったし
JOYというひとりの人間の描かれ方もとても興味深かったです。
こういうの、もっともっとやって欲しいわ♪
投稿: ふらっと | 2008年9月20日 (土) 14:12
ふらっとさん☆こんばんは
作家ごとに変わるJOYの描き方がとっても面白かったですね。
こういう連作を、他でもやってほしいですよね!
投稿: Roko | 2008年9月20日 (土) 21:51