『女たちよ!』 伊丹十三
茹ですぎたスパゲッティの水を切って、フライパンに入れ、いろんな具を入れてトマト・ケチャップで炒める。しかも運ばれてきた時にはすでに冷え始めていて湯気も立たぬ。これをあなたはスパゲッティと呼ぶ勇気があるのか。ある、というなら私はもうあなたとは口をききたくない。(”スパゲッティのおいしい召し上がり方”より)
私が初めてこの本を読んだのは高校生の時、とにかくビックリしたんですよ。スパゲティのゆで方はアル・デンテでなければいけないとか、カマンベール・チーズとはどんなものであるとか、当時のわたしにとって驚きだらけの本だったのです。
この本の初版が出版されたのは1968年!なんと40年前ですよ~!伊丹さんは、この本の中で日本人の文化レベルの低さを嘆いています。もし伊丹さんが今も生きてらしたら、40年経ってもちっとも日本人って変わってないねぇと嘆いているんじゃないかなぁ?
伊丹さんが語るのは徹底したダンディズムです。車のこと、洋服やバッグや靴のこと、お酒のこと、美味しいもののこと、そして男と女のこと。そんなこと知らなくても生きていけるけど、一度知ってしまったら、知らないで生きてきたこれまでの自分が恥ずかしくてしょうがなくなることばかり。
服なんていうものは、デザインぽいものを着れば着るほど、そうして、そのデザインが一世を風靡していればいるほど、これはもうユニフォームの効果に近づいてしまう。今日こそは一番目立って見せるぞ、とばかり買ってきたての最新式の工夫に身を固めて町へ繰り込んでも、それはあんた、だめなのだよ。街中に溢れたユニフォームの中にスポリとおさまってしまって、あんたは透明になってしまうな。
流行りのものを着てないと恥ずかしいって言う人、けっこう沢山いますよね。それって、決してオシャレな人の発言じゃないですよね。どちらかと言えば地味な人、目立ちたくない人ほど流行りのものを着たがるというのは、結果として目立たなくなるからなのかもしれません。
流行なんてものに振り回されて、かえって没個性になってしまうって、とても日本人的な行動ですよね。そういうのって何だか情けないなぁ。どうして他人と同じにしたがるんだろう?自分は自分なのにねぇ!
伊丹さんのツッコミは、どれもこれも鋭いんです。思わずニヤッと笑ってから、自分もそうだったと気づいて冷汗が出てくるようなことが沢山あって、油断も隙もありません。
インスタント・コーヒーについては、世の中にそういうものがある、ということを知っているだけにとどめたい。世の中には、そういうものを飲まなければならぬかわいそうな人たちがいるということを知っているだけにとどめたい。
世の中のほとんどの方々、この本を読んで本当のカッコよさについて、しっかりとお勉強してくださいませ。真実を知るのに、遅すぎるということはありませんから。
この本の最後に「配偶者を求めております」というページがあります。そこには、伊丹さんの理想の女性像が挙げられているのですが、これが実に素晴らしい!
一部抜粋します。
1.ごく贅沢に育てられたひと
1.ただし貧乏を恐れないひと
1.お化粧をひつようとせず
1.頭がいいけれどばかなところがあり
1.ばかではあるが愚かではなく
1.まだ自分が美人であることに気がついてなく
1.伊丹十三が世界で一番えらいと思っている
900冊目(今年83冊目)☆☆☆☆☆☆(絶対オススメ!)
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コメント
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高校生のときからこういう本を読んじゃうと、
生きづらいときがありませんか?
文化レベル低いままですよね。日本人・・。
何年経ってもとほほ・・です。
そんな日本人の一人がワタクシ。
頭がいいけれどバカなところがあり、
バカではあっても愚かではない。
こんな微妙なバカさ加減はどうしたら身につくのでしょうか?
投稿: ゆみりんこ | 2008年7月 9日 (水) 01:26
ゆみりんこさん☆おはようございます
わたしは、伊丹さんとJJおじさんを読み、ジャズを聞く高校生でした。今考えてみれば、女子高生っぽくないなぁ。
この本を読めって教えてくれた同級生は、旅行先にコーヒー・ミル持ってきてましたよ。(^^ゞ
「世の中の人たちって、なんでそんなことも知らないの!」って思うことは沢山あるけれど、そんなに生きづらいと思ったことはありません。
わたしはわたし、人は人だと思ってるからかな?
色んな事に興味があって、何でもやってみる。
失敗を恐れない。
自分なりのこだわりがある。
人生は楽しむものだと思っている。
伊丹さんから教わったことは、わたしの芯の部分になっているような気がします。
ちょっとでも伊丹さんの域に近づきたいもんです。
投稿: Roko | 2008年7月 9日 (水) 08:25