『イッツ・オンリー・トーク』 絲山秋子
本間は、「橘さんはなんで結婚しないのよ」と言った。
「いい男がいない」
「理想高いんでしょ?」
「理想じゃなくわたしのレベルが高い」(本文より)
主人公の優子さんは鬱病で会社を辞めた。今は絵を描いている。大学時代の友達の本間くんはEDだし、いとこの祥一くんは自殺未遂したばっかり。ネットで知り合った昇くんはやくざで、痴漢の男の名前は知らない。
誰にだって言いたくないことはあるし、誰にだって良い所があるし、誰にだってイヤな所がある。何処を見ているのか?何処を評価するのか?によって、同じ人だって良い人になったり悪い人になったりするんだよね。
この物語に登場する人達って、みんな本当はいい奴なんだけど、何かを勘違いしていたり、世渡りが下手だったりしてるから、変な奴って思われちゃうんだろうなぁ。それぞれに良いところがあるのにねぇ。
今回も、登場する車は凝ってます!優子さんの車はランチア・イプシロン、バッハの車はランチア・デルタ・インテグラーレ、痴漢の車はオペル。車の選択だけで、人となりが見えてくるようです。
この物語のタイトル「イッツ・オンリー・トーク」は King Crimson の Elephant Talk という曲の歌詞からとったものなんだそうです。
昔、日本のテレビCMにも出演したことがある、エイドリアン・ブリューが歌ってるそうで、ううむ、これはチェックしなくっちゃ!
絲山さんの文章って、不思議なくらい女を感じさせないんですよね。この作品だって、主人公は女性でHな話も出てくるんだけど、女くささがない!くよくよすることもあるけど、決して湿っぽくならない。硬すぎないハードボイルドって感じなんです。
その代わり、絲山さんの作品に必ず登場するのは車と音楽、そして薬!どちらかといえば男っぽい、考えようではオタクっぽい世界観なのかもしれません。
この本には「イッツ・オンリー・トーク」と「第七障害」という作品が収めれています。「第七障害」の最後で語られている「群馬に帰りたい」というところ、絲山さん自身の心の叫びだったのかなぁ?(現在、絲山さんは群馬県在住です)
902冊目(今年85冊目)☆☆☆☆☆
« NAMASTE FOODS(ナマステ・フーズ) | トップページ | 『つむじ風食堂の夜』 吉田篤弘 »
「音楽が聞こえてくる本」カテゴリの記事
- 『祝祭と予感』 恩田陸 297(2022.10.31)
- 『音読でたのしむ思い出の童謡・唱歌 令和に伝えたい心に響く歌101』 斉藤孝(2022.07.09)
- 『蜜蜂と遠雷 上』 恩田陸(2022.05.29)
- 『グラフィック伝記 フレディ・マーキュリー』 アルフォンソ・カサス(2019.12.18)
- 『冨田勲 -伝統と革新を融合させた巨星-』 妹尾理恵 (2019.07.11)
「日本の作家 あ行」カテゴリの記事
- 『訂正する力』 東浩紀 326(2023.11.23)
- 『人間椅子』 江戸川乱歩 321(2023.11.18)
- 『気がついたらいつも本ばかり読んでいた』 岡崎武志 324(2023.11.21)
- 『わたしの1ケ月1000円ごほうび』 おづまりこ 307(2023.11.04)
コメント