『アドルフに告ぐ』 手塚治虫
オリンピック開催中くらいは、戦争を停止しようという約束を、今回は守れないまま大会が始まってしまいました。どうして人類は戦争を止めることができないのでしょうか?
この物語の時代は、ナチス・ドイツが台頭し、まさに第二次世界大戦が始まろうとしていた頃です。
在日ドイツ領事の父と日本人の母の間に生まれたアドルフ、近所のパン屋の息子でユダヤ人のアドルフ、2人は子供のころにはあんなに仲良かったのに、時代が彼らを引き離していくのです。
世の中の大きな流れに流されてしまい、自分が信じていることと正反対の方へ流されてしまうことの怖さが、作品全体に溢れています。「そっちへ行ってはいけない」と分かっていても、どうすることもできない世界に生きなければならなかった彼らはどれほど悩み続けたのでしょうか。
戦争の原因はいつも「民族」そして「イデオロギー」です。隣人と自分が違うのは当たり前なのに、力で相手を支配しようとするところから争いが起きてしまいます。
戦争によって傷つくのは、いつもイデオロギーとは関係のない普通の人々です。戦争の愚かさ、悲しさをみんなで考えることによって、戦争を無くしていこうというのが手塚さんの願いだったのだと、わたしは思うのです。
915冊目(今年98冊目)☆☆☆☆☆
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