『あなたはなぜあの人の「におい」に魅かれるのか』 レイチェル・ハーツ
人間の五感の中で、嗅覚は比較的軽く見られてるんじゃないだろうか?たとえば、視覚や聴覚を無くすことと比べれば、嗅覚が無くなることなど大したことではないと思っていませんか?
風邪で鼻が詰まっていると食べ物の味が分からなくなるって経験ありませんか。匂いが無くなると味の違いが区別できなくなっちゃうんです。たとえばジュースを飲んだとき、甘いということは分かっても、それがオレンジなのか?ピーチなのか?が分からなくなってしまうんだそうです。
この本で最初に紹介されていたのが、交通事故で嗅覚を無くしてしまったマイケル・ハッチェンスの事例です。嗅覚を無くしたことが引き金となって「うつ病」を発症した彼は、この世で生きる楽しみをすべて奪われ、自殺に至ったというのです。
1997年に、マイケルが自殺したというニュースを聞いた時、「何で?」と思ったことを覚えています。INXSのボーカルとして活躍していた、快楽主義者のマイケルが自殺するなんて、わたしには到底考えられなかったのです。
嗅覚が無くなることによって、食欲も、性欲も、楽しいと感じる感情もすべて奪われてしまうなんて、今まで考えてみたこともありませんでした。
モネル化学感覚研究所が行った最近の研究から、ゲイの男性はストレートな男性や女性の汗の臭いよりも、ゲイの男性の汗のにおいを好むことが見つかっています。
これってスゴイことだと思いませんか?自分にとって、より好ましいパートナーとなる可能性が高い人を匂いで選別できるんですね。これはゲイの人だけでなく、ヘテロの人だって同じはず。
匂いの中には、その人の遺伝子情報も、性癖も、食事の傾向も含まれているんです。人間の本能は匂いの中からそういったものを読み取っているんだから、好ましい臭いの人に惹かれるんですよね。だとすると、見た目だけで相手を選ぼうとするって、とても危険なことなんですね。
匂いというものの力を、知れば知るほど不思議でなりません。
最後に、余りにも有名なマリリン・モンローのセリフ(ベッドではなにを身にまとっているのかを問われて)を、
「シャネルNo.5 を2滴」
913冊目(今年96冊目)☆☆☆☆☆
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