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『マイナス・ゼロ 改訂新版』 広瀬正

Mainasuzero

マイナス・ゼロ

広瀬正(ひろせ ただし)

集英社文庫

2008年本屋大賞「この文庫を復刊せよ!」第一位

 この作品を最初に読んだのは、文庫化された1982年でした。あれから26年も経ってしまったのですね。10年ほど後に絶版となり、古本市場では常に高値が付いていたのだそうです。2008年古本屋大賞の「この文庫を復刊せよ!」で第一位となり、ついに復刊されました!

 

 タイムトラベルものなのですが、SF臭くないんですよね。タイムスリップしてしまった主人公が歩きまわる昭和の初めの東京の描写が本当に素晴らしいです。銀座四丁目交差点の服部時計店(現:和光)が建設中だったんですね。和光は只今改修中なので、不思議なつながりを感じてしまいます。

 

 デパートの場面で登場するマネキンガール、土建工事のヨイトマケ(美輪明宏さんの歌で有名ですね)など、戦前の風俗が見事に描かれています。バーのお姉さんたちが「男装の麗人」ターキー(水之江竜子)に憧れていて、彼女のセリフを真似してるあたりは「へぇ~!」って思ってしまいました。

 

 わたしが小さかった頃、ターキーはすでに中年だったんですけど、かなり人気がある人でTVにもよく出てました。プロデューサーとして石原裕次郎を売り出した方でもあるんです。

 

 自動車や飛行機、ラジオ、そして音楽のこと説明は実に細かいですね。バンドマンをしていたことがあったり、モデラー(模型製作)もしていたという広瀬さんの、凝り性な部分が度々登場してきます。

 

 タイムトラベル中に何かをしたことによって生じるパラドクスの話が、この小説の中でも語られているのですが、あのライターはどうなっていくのだろう?という疑問をちゃんと残してあるところが憎いなぁ!

 

 広瀬正さんは1970年にこの作品を発表し、わずか2年後の1972年に心臓発作で急死されています。もっと長生きして、沢山作品を書いて欲しかったのに!

 

 47歳で亡くなった彼の棺には、友人たちによって「タイムマシン搭乗者 広瀬正」の紙が貼られたのだそうです。

 

 広瀬正さんの作品は6冊しかないので、昔の文庫はすべて持っているのですが、新版もきっと全部買っちゃうんだろうなぁ。

 

 次は「ツィス」、おイネさんに久し振りに会えるのが楽しみです。(*^^)v

 

914冊目(今年97冊目)☆☆☆☆☆☆(絶対オススメ!)

 

P.S. 先日母と話をしていたら、実際にデパートのマネキンガールをしていた人が実家の近くに住んでいたのだそうです。お客様が「あら、素敵なショールね」なんて言いながらそばに寄って来た時に、わざと動いてビックリさせたりしていたんですって!

 

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コメント

こんばんは。
本当に面白いお話でした。
最後まで読んで、人の動きを自分なりに紙に書いて追ってみたりして。
でも、わかんなくなっちゃいました。
広瀬さんの名前聞いたの初めてだったのですが
全部読みたいなって思いました。

ななさん☆こんばんは
これを機に、広瀬さんが再評価されるといいなぁって思ってます。(#^.^#)
解説を書いている方々が豪華なのも魅力です!

こんばんは、久しぶりに物語のおもしろさを満喫したという気分です。語りが上手でどんどんひきこまれていくのに、話の展開していく先がなかなか見えないし。

じつはいま『ツィス』を読んでいるのです。広瀬正さんの本は月に一冊出てくるらしいので、楽しみにしています。

ディックさん☆話にグイグイ引き込まれちゃいますよね。(#^.^#)
年末まで毎月1冊ずつ出ますね。
わたしも楽しみにしています。

こんばんは。
復刊、そういういきさつがあったのですね。
知ってる人はわかってるって、うれしかったです。
描写が緻密で、リアルでしたね。
私も昔の文庫で読んで、記憶が甦りました。
TB反映されないみたいで、ごめんなさい。
URLを書かせていただきますね。

http://1iki.blog19.fc2.com/blog-entry-556.html

藍色さん☆おはようございます
本当に良いものは時間を超えます。
広瀬さんは本当の意味でのタイムトラベラーだったんだなぁって思いました。

>タイムトラベルものなのですが、SF臭くない

Roko さんが誉めていらっしゃるのは、小説としての基本的な部分、登場人物の描き方とか、町の様子の描写とか、そういう部分だと思います。
まったく異論はありませんが、でも、この物語の核になるノスタルジックな部分は、広瀬さんが作った仕掛けによるものですから、そういう意味では、「きわめてSF的」とも言えそうに思います。

独特の遊び方にも思わずはっとしますね。いきなり少年が出てきて名乗ったりするんですから。ぼくにはそれを書きたかったその気持ちがわかるなあ。

ディックさん☆こんばんは
この物語で描かれている戦前の世界は、過去の世界であると同時に、広瀬少年が存在していた場所でもあるんですよね。
それはフィクションでもあり、現実でもあるというパラレルワールドなのだとわたしは感じました。
広瀬さんが作ったタイムマシンに、再び乗ることができて本当に幸せだなと思います。

Rokoさんのブログを読んでからずっと読みたかった「マイナス・ゼロ」ようやっと読めました。面白かったです。SF要素よりも戦前の日本の描写がすばらしかったです。
雨漏りや銀座の騒音など、音についての表現も秀逸。最後はミステリのようなどんでん返し。広瀬正さんはいままでまったく知らなかった作家さんなので、Rokoさんのおかげでまた面白い本を見つけることができました。ありがとうございます。

日月さん☆嬉しい!!
広瀬さんの作品を気に入って頂いて、とっても嬉しいです。
日本にもこんな人がいたんだなぁってビックリしちゃいますよね。
広瀬さんの他の作品も是非読んでくださいね。

Rokoさんへ、
はい、ノスタルジックいっぱいの話でしたね、、。
異様な、リーダビリティでさくさく読めました。

indi-bookさん☆さくさくですね~!
とにかく物語として面白いし、風景描写が見事だし、こんなに読みやすい文章を書いた広瀬さんに感服してしまいます。

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» 「マイナス・ゼロ」 広瀬 正 [日々の書付]
Rokoさんのブログで紹介されていた広瀬正さんの「マイナス・ゼロ」を読みました。圧巻でした。 タイムマシンを扱ったストーリーで、タイムマシンも重要な役割を果たすのですが、主人公が訪れることになる昭和初期〜30年代の時代描写こそがこの物語の主軸かもしれません。 また、通常のタイムマシンものと違った解釈で過去と未来をつないでゆくストーリー展開にはおどろきました。 また、作者の広瀬正さんはジャズ奏者でもあったので、戦前の銀座の騒音から、家の雨漏りの音の文章表現がすばらしかったです。 太平洋戦争... [続きを読む]

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