『おひとりさまの老後』 上野千鶴子
長生きすればするほど、シングルが増えてくる。超高齢社会で長生きしたひとは「みーんなシングル」の時代、がすぐそこまで来ている。
ずっと結婚しなかった人、離婚した人だったら、老後の一人暮らしをどうしよう?ということを、何とはなしに考えていると思います。親のことは自分が面倒をみられるけど、自分の面倒は誰が見てくれるんだろう?という漠然とした悩みってありますよね。
結婚しているから、子供がいるから大丈夫!って思っている人、そうじゃないんですよ。結婚してたって配偶者が先に無くなってしまうかもしれないし、子供だっていつまでもそばにいるってものじゃないし、女性の老後がひとり暮らしになる可能性ってとても高いのです。
そんな老後をどう過ごしていくのかを漠然と悩むのではなく、きちんと考えてみようと著者の上野さんは熱く語っています。
ココロにもカラダにも、がまんはなんのトクにもならない。
人になんと言われようが、自分が気持ちいいと感じられる生き方をすることが何より大事なのです。だって自分の人生なんだもの!世間体とか、遠慮とかばっかり考えていたら、何もできなくなってしまいます。
自分だけの力で生活できなくなったとしても、遠慮しながら介護してもらう必要なんかないんです。こうじゃないとイヤだと、はっきり意思表示することが、より良い介護を受けるヒケツのようです。
自分の場合も、親の場合も、この点を間違えてしまうと不幸な結果になってしまいます。いくら自分の親だからといって、生活ペースや人生観がまったく違う人と一緒に過ごすことによって生じる辛さをムリしちゃいけないという指摘は、わたしの心にズーンと響きました。
何でもかんでも自分でやらなけりゃ!という変な思い込みを止めようって、教えてくれる人はなかなかいないんです。人にお願いできることはお願いして、「自分でなければできないことだけやればいい」という割り切りをしようという上野さんの提案は、本当に素晴らしいなぁと思いました。
そして、自分が死んだ後のことを、きちんと考えておくべきだなと思いました。兄弟も子供もいないわたしが長生きした場合、法定相続人がいなくなってしまうのです。何もしなかったら、わたしの遺産は国のものになってしまします。
大した額じゃないにしても、有意義な使い道を考えておかないと!それをきちんと遺書に書いておかないとね。未来の誰かのために役立てるように!
923冊目(今年106冊目)
P.S.この本の感想として、「強者の意見」という声がけっこう多いのにビックリしました。これまでの常識を打ち破ろうとすると、こういう壁が現れるのですね。
「娘である」「妻である」「嫁である」「母である」という常識に押しつぶされてしまっている女性たちにとって、「できることだけやればいい」という上野さんの言葉は大きな意味があると思うのです。
そして男女を問わず、「最後はひとりになる未来」 という事実を、しっかりと考えなければいけないと思うのです。
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