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『ツィス』 広瀬正

Tulisu

ツィス

広瀬正(ひろせ ただし)

集英社文庫

謎のツィス音(二点嬰ハ音=ド♯)が神奈川県で発生した。やがてそのツィス音は拡大し、首都圏を襲う。

 生きていく上で必要なものが突然使えなくなってしまうと、人間はパニックに陥ります。たとえば、老眼で近くが見えなくなるだけでも文字を読むのが嫌になってしまうし、風邪で鼻が詰まって匂いが嗅げなくなると、食欲がなくなるだけでなく、何だか世の中が味気なくなってしまいます。

 この本が書かれたころは「公害」というものが大きく取り上げられていました。日本が成長するにつれ、様々な公害が発生していたのです。光化学スモッグ、薬害、土壌汚染、騒音、排水による川や海の汚染、色んな問題が山積みでした。

 このストーリーの主人公は「音」です。原因不明の音「ツィス」によって、生活を脅かされるようになっていく様は、こんなことが本当に起きても不思議ないなぁという気持になってきます。

 ストーリーとは直接は関係ないのですが、イラストレーターの榊さんが歩く銀座の街の風景は、とにかく懐かしかったです。最初にこの本を読んだ頃にはまだ存在していた「日劇」や「東京都庁」、そして洋書の「イエナ」は、その姿が目に浮かんできました。

 「音階の高低と、音量の大小の区別がつかない人が多くて困る」という表現が何度も出てきましたが、バンド活動もしていた広瀬さんですから、「音」を主人公に物語を作ろうと思われたのでしょうね。

 そして、誰もいなくなった街を走る「T型フォード」も広瀬さんの得意分野です。車関係の話は、これからですよ~!

 こうやって、毎月広瀬さんの小説を読めるって幸せだなぁ!

920冊目(今年103冊目)☆☆☆☆☆☆(絶対オススメ!)

 

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コメント

いやな設定を考えましたよねぇ。ずっと耳鳴りがしていて、それが次第に大きくなるなんて、想像しただけでうんざりします。だから最初のうちは、読むのがつらくて…。
イラストレーターの榊さんが出てきて、プロットも前向きになり、ほっとして読み続けました。

ディックさん☆こんばんは
音が聞こえないようにするための耳栓ってのもイヤですからねぇ、こんな事態が本当に起きたら、逃げ出す人が続出するのでしょうね。
そういう想定を作ったのは、さすがミュージシャンの広瀬さんだなぁって思いました。

突然ですが、『エロス』がとてもいいです。
理由は…、書けません。
あれこれ雑音が聞こえてこないうちにどうぞ。

ディックさん☆こんばんは
「エロス」は買ったけどまだ読んでません。
急いで読まなくっちゃ!!

耳栓をしただけで普通に生活できなくなる人たち。
なるほどな~って思いました。
榊とオイネの生活が楽しそうでしたね。
次は「エロス」楽しみです。

ななさん☆耳栓生活はイヤですねぇ~!
どんなことであっても慣れてしまうと、それが普通になってしまうってところが怖いですよね。
誰それがカッコいいとか、何が流行っているとか、それってホントなの?と疑ってみることの大事さを感じました。
何も考えずに流されちゃうことが一番怖いことなんですよね。

Rokoさん
また広瀬作品読ませてもらいました。
「音」による脅威というのは目に見えない分、
じわじわと押し寄せてくる感じと、音のない世界での街の様子がとてもリアルでした。
おイネさん、かっこよかったです。
かわいくって情にあつくて。ともすれば悲惨になる世界を明るくしてくれたひとでした。

日月さん☆こんばんは
音がない世界って、もの凄く不便だしつまらなそうですよね~!
そんな時におイネさんみたいな人が傍にいてくれたら、どんなにか心強いでしょうね。

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» 「ツィス」 広瀬 正 [日々の書付]
「マイナス・ゼロ」にひきつづき、広瀬さんの「ツィス」を読みました。 【ストーリー】 神奈川C市でツィスの音階の音が鳴るという現象がおこる。 最初はかすかな音だけで、聞き取れる者もごくわずかだったが、音は徐々に大きくなり、日常生活にも支障をきたすようになった。 やがてツィス音は東京にも広がりをみせることに。 中途失聴者のイラストレーター、榊英秀は耳が聞こえないこともあり当初はツィス音騒ぎに無関心だったが、ツィス防音製品のポスター制作を依頼されてから、ツィス音に関わることに… 「マイ... [続きを読む]

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